テツヤ、留学生活はどうだい。

Kyota Ko,Simon Gillett(東京工業大学英語コミュニケーションプログラム 講師/ベルリッツ・ジャパン)

本コンテンツは,実験医学同名コーナーからの転載,2014年11月に発行された単行本「理系英会話アクティブラーニング」シリーズ(発表・懇親会・ラボツアー編スピーチ・議論・座長編)からのスピンアウトとなります.イギリス留学中のテツヤが実験医学onlineにも登場!

第7回 かっこよく使いこなしたい英語での「逃げ文句」

こんにちは,テツヤです.早いもので,イギリスに留学して2年半になりました.渡英当初に自己紹介のたびに使っていた逃げ文句

English is not my best language. Please bear with me.
英語は一番得意な言語ではないので,大目に見てください

もそろそろ通用しなくなってきました.

英語でのコミュニケーションに慣れてきたな,と自分でも思いますし,いつまでも言い訳しているわけにはいけない!

周りはピンチを切り抜けるためのお手本だらけ

留学ってつらいけど,毎日が学びの宝庫です.例えばこの前 「なるほどな」 と思ったことを1つ.アメリカ人の同僚アンジーとイギリス人の同僚ヒューとの3人で昼食をすませ,研究所に戻りに歩いていたときのこと.おしゃべり大好きなアンジーがいつもクールなヒューに 「そういえばヒューは弁護士事務所で働いていたのに,なんで研究者になることにしたの?」 と聞きました.

僕は理由を知っていました.以前お酒の席で,ヒューが30分くらいかけて熱く語っていたのを覚えていたので.でも研究所まではあと2分ぐらいでついちゃう! とても話し切る時間はありません.ヒューはどうするんだろう,と一人でドキドキしていたら,彼から一言.

It’s a long story.
それは長くなるな

そうしたらアンジーは

Of course.
そうよね

と言ってすぐに話題を変えたのです.

どうやら「It’s a long story」は 「サラッと話せる内容じゃないからやめておくよ」 という意味を含むようです.数分のスモールトークでするべき軽い話じゃなかったら,あえて話さないのもお互いのため.なんて便利な逃げ文句なんだろう,と感心しました.

こういった逃げ文句は他にもたくさんあります.いつぞやのパーティーで女性研究員がアンジーに彼氏とうまくいっているのか聞いたときに彼女から返ってきた言葉が

It’s complicated.
複雑な事情なの

で,それ以上誰も深入りせずに,すぐに話題が切り替わりました.きっと 「It’s complicated」 は 「話すと暗くなっちゃうからやめておくわ」 という意味を含むのでしょう.言いにくいことを一言に集約して,相手に察してもらうためのフレーズはエチケットとして知っておくべきだな,と思いました.日本でも 「ちょっと難しいかもしれません」 が本当は 「無理です」 という意味だったり,「おじいさまが亡くなられてしまって,さぞおつらいでしょうね」などとはっきり言うと悲しい気持ちを増幅させかねないから 「お悔やみ申し上げます」 と言ったり.言葉のエチケットって,実際に目の当たりにして学んでいくのが一番身につきますよね.

お誘いのお断りに使う 「逃げ文句」

いつも 「逃げ文句」 を背中で教えてくれる同僚のアンジーですが,彼女はちょっと空気が読めないというか,あえて空気を読まないようなところがあります.みんなでカラオケバーに行くことになったある日(イギリスにもカラオケバーがあるんです),アンジーは出がけにいつも寡黙な感じのハリントン教授を 「一緒にいきませんか!」 と元気よく誘ってしまったのです! その瞬間みんなで 「行くわけないだろ…」 と目で会話できてしまいましたが,さすがハリントン教授は大人です.

Sorry, but I’m not a big fan of Karaoke. You guys go ahead and have fun.
カラオケはあまり得意ではないのでね.みんなで楽しんできてください

とかわされました.しつこく粘ることなく 「わかりました! じゃ行こっか!」 と元気よく出て行くアンジー.

華麗な2人の応酬,胸ポケットに紙と鉛筆がありさえすればその場でメモしたかったところです.今度またアンジーに元気いっぱいに寒中水泳に誘われたら

I’m not a big fan of risking my life. You go ahead and do that to yourself, OK?
命を懸けるのは得意じゃないんだよね.懸けるのは自分の命だけにして行ってらっしゃい

とニッコリ返そう,って.

(( Listening! )) 困ったときに使う逃げ文句

  • It’s a long story. それは長くなるから (話すのは) よしておくよ
  • It’s complicated. 複雑な事情があって…
  • I’m not a big fan of Karaoke. カラオケはあまり得意ではないので….
本連載の掲載された実験医学誌もぜひご一読ください!

実験医学 2016年2月号 Vol.34 No.3
発見から100余年 Notchシグナルの新世紀
発生・再生から、がん・代謝性疾患まで拡がる舞台

山本慎也,森本 充/企画