レジデントノート:医師の書類作成 はじめの一歩〜診療情報提供書、診断書から院内の記録まで、効率的な“伝わる書類”の書きかた
レジデントノート 2023年5月号 Vol.25 No.3

医師の書類作成 はじめの一歩

診療情報提供書、診断書から院内の記録まで、効率的な“伝わる書類”の書きかた

  • 大塚勇輝,大塚文男/編
  • 2023年04月10日発行
  • B5判
  • 146ページ
  • ISBN 978-4-7581-1697-8
  • 定価:2,530円(本体2,300円+税)
  • 在庫:あり
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特集にあたって

特集にあたって
文書作成スキルは医師に必要な能力

大塚勇輝
(岡山大学病院 総合内科・総合診療科 助教)

私は医師としての「はじめの一歩」である初期臨床研修を大学病院で研修したから特にかもしれませんが,研修医になったばかりの4月か5月の頃から「医師という職業は文筆業なのではないか」と感じていました.例えば,病棟に患者さんが入院するとなれば,入院診療計画書入院時サマリを記載し,毎日イベントがあるたびに電子カルテへの記録を行い,病状説明や実施した手技・手術などもそれぞれすべて記録に残して,退院時には診療情報提供書退院時要約を作成して,学会や論文での症例報告の際にもまた作文を行う….周囲の先生方を見ていても,診察や手技に充てる時間よりもともすると電子カルテへのタイピング時間の方が医師の仕事時間の多くを占めている気がしていました.一方で,死亡診断書に代表される各種診断書介護保険の主治医意見書など医師しか記載することができない,言い方を変えると,「医師が記載・発行するということそのものに意義がある」文書・書類も多数存在することを実感しました.こうしたことを踏まえて,(もしかするとそれが本質ではないにせよ)適切にそうした文書を作成できることは医師に必要な能力の1つに違いないと考え,それを習熟させることを意識して研修し今に至ります.

年次が進み,後輩や研修医の先生方の作成した文書類の添削・指導をすることも増えました.若手指導医として再考してみると,こうした各種文書の作成ができることは,医師が他者と良好なコミュニケーションをとり,そして他者からの信頼を得るうえで非常に重要であると再認識しているところです.けれども自身の経験を振り返ってみると,体系的に文書の書き方について学ぶ機会は意外にもほとんどなく,その作法やテンプレートの類いは研修のなかで経験知として独学的に習得していくよりほかはないため,研修修了時点での習熟度には個人差が大きくなるように思います.

そこで本号では,「いつかまとめてほしい」と言われていた「医師の書類作成」について若手の視点で特集しました.私自身が学生から現在に至るまでの間にご指導をいただいた先生方に各稿の執筆をいただいております.天野先生らの3部作を読めば,診療情報提供書(p.425,p.432)・院内紹介状(p.438)の構成や文面で悩むことはないでしょう.入院時サマリ(p.444)と退院サマリ(p.452)については,森川先生小田先生が,それぞれ収集するべき情報と病歴要約への応用へという視点で対比的にまとめてくださっています.研修中に1度は書くことになるであろう,そして研修が修了すれば当然のスキルとして記載を求められる介護保険主治医意見書(p.461)と死亡診断書(死体検案書)(p.473)については,それぞれ曽我先生ら宮石先生らにお願いしました.まとまった情報が少ないにもかかわらず記載頻度の多い手技の記録(p.481)と病状説明の記録(p.485)については,橋本先生ら志水先生らにご執筆をいただいています.また徳増先生原田先生に,処方箋に関する知識(p.490)と学会発表向けのまとめ方(p.492)についてそれぞれコラムを書いていただいています.

私の指導教授でもある大塚文男先生にも,かつて研修医・若手医師だった頃を思い出していただきながら,共同編集をいただきました.平成から令和にかけての時代の変化をつなぐことができる内容に仕上がっております.医師としても社会人としても「一歩」を踏みだした1年目の先生,ひと通りのローテーションを終えていろいろなことに疑問をもちはじめた2年目の先生,また,それらを指導する3年目以上の若手指導医の先生方だけでなく,ベテランの先生方にもお役立ていただければと思います.初期研修を修了して独り立ちしたときの礎になるような知識とマインドをお届けできれば幸いです.

著者プロフィール

大塚勇輝(Yuki Otsuka)
岡山大学病院 総合内科・総合診療科 助教
岡山大学を卒業後,同大学病院で初期研修.総合診療医としての研鑽を積みながら大学院にも進学し博士号を取得.2022年より現職として診療・研究・教育に取り組んでいる.

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