「じつはおしっこが…」,不意に出会う「尿の悩み」.患者に相談されたら,どこまで診ていますか?基本的な診察法,注意すべき鑑別診断や薬の使い分けなど,実践的に解説したプライマリ・ケア医のための入門書!
−後略−
プライマリケア医向けの排尿障害診療の本です。参考に買って読んでみましたが、圧巻です。身体診察、残尿測定の重要性を序盤で述べ、泌尿器科医が本当に困っている「頻尿には抗コリン」のピットフォールもきちんと解説されています。
他にも抗コリン薬、α1遮断薬などの病態生理を示し、我々泌尿器科医でも好みに左右されがちな抗コリンの作用と副作用のtrade-offの関係を系統的レビューをもとにグラフ化したり、α1遮断薬の効果の使い分けを示したりと見事です。抗コリンで悩まされる口渇と頻尿に対する効果の時間をデータで示し、それらのタイムギャップから患者に対して説明すべきことを抽出したりと、エビデンスとプラクティスの融合がなされています。
また男性の尿道カテーテルの入れ方、尿道がわからない女性の尿道カテーテルの入れ方まで書かれており、泌尿器科医の後期研修医にも充分読み込む価値があります。
漢方薬や健康商品についても言及して、後者に関しては自身の臨床研究を交えて結論を出しています。
今までに有りそうでなかった、素晴らしい本です。高齢社会に伴いすべての医療従事者は排尿障害に接する機会が多くなります。排尿障害が転倒やフレイルに関連するなどの報告が出てきており、排尿障害を正しく診断し、治療することは泌尿器科医、プライマリケア医とも重要です。興味があるかたは是非一読を。
吉岡貴史(京都大学医療疫学分野、岡山大学泌尿器科)
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