2017年6月号掲載・2025年4月30日公開

意識障害の鑑別疾患は多岐にわたります.AIUEOTIPSは覚えましたね?! そのなかで院内でも救急外来でも出会う頻度がそれなりに高く,緊急性が高いのが低血糖です.低血糖は誰もが正しく診断できなければなりません.これが簡単なようで意外と正しく行われていません.「目の前の患者は低血糖である」と診断するためには満たすべき3つの条件があります.それがWhippleの三徴です(表).

これらをすべて満たさなければ低血糖と診断してはいけません.意識が悪く,血糖値が低いこと(①,②)は確認しても,その後の意識が普段通りへ改善するか(③)を確認せずに低血糖と判断してはいけません.この状態は低血糖ではなく「血糖低値」です.血糖低値には,単なる低血糖で意識の戻りが遅い場合もありますが,そのほかの疾患が隠れている場合もあります.血圧が高ければ脳卒中,正常ないし低ければ敗血症などを積極的に考え精査を継続する必要があります.

院内の指示簿などで,「低血糖時ブドウ糖内服/静注」のような指示が出ている場合があります.指示を事前に出しておくことは悪くはありませんが注意が必要です.低血糖は迅速に対応する必要がありますが,なぜ血糖が下がったのか,本当に低血糖だけなのかを必ず確認するようにしましょう.特に,本来低血糖になり得ない(糖尿病治療中ではないなど)患者の血糖が低かった場合には,敗血症など必ず原因があるはずです.ブドウ糖を投与して安心してはいけません.


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