2017年6月号掲載・2025年7月23日公開

薬は誰もが患者さんにとってよかれと思って処方するわけですが,残念ながらその薬のせいで患者さんにとって不利益が生じていることが少なくありません.皆さんもポリファーマシーという言葉を聞いたことがあるでしょう.5種類以上の内服薬で薬剤関連有害事象(adverse drug events:ADEs)が増えることから,明確な錠数の定義はありませんが5種類以上をポリファーマシーとするのが一般的です1).入院患者が5種類以上の薬を内服している場合にはプロブレムリストにポリファーマシーをあげておきましょう.いかなる症状も薬の影響を考える癖をもつことが重要です.

年齢とともに処方薬も増え,高齢者では常にポリファーマシーを意識しておく必要があります.処方数が増えれば,ADEsが増えるだけではなく,潜在的に不適切な処方(potentially inappropriate medications:PIMs)も増えます.PIMsとは,現段階では有害な事象を起こしていないものの,このまま継続すると今後有害事象を起こす可能性が高い処方と定義されます.糖尿病患者に対するSU薬,不眠に対してしばしば処方されるベンゾジアゼピン系薬などが代表的です.このPIMsを選別するためのスクリーニングツールとしてBeers criteria2),STOPP/START criteria3),高齢者の安全な薬物療法ガイドライン4)があり,一度は目を通しておきましょう.

入院患者の薬をあらためて見直し,ADEsやPIMsの可能性はないか,「目の前の患者にいま必要な薬」は何なのかを考え薬を整理することは,院内急変を未然に防ぐ1つの有効な手段です.

引用文献

1) Field TS, et al:Risk factors for adverse drug events among nursing home residents. Arch Intern Med, 161:1629-1634, 2001(PMID:11434795)

2) American Geriatrics Society 2023 updated AGS Beers Criteria® for potentially inappropriate medication use in older adults. J Am Geriatr Soc, 71:2052-2081, 2023(PMID:37139824)

3) O'Mahony D, et al:STOPP/START criteria for potentially inappropriate prescribing in older people:version 3. Eur Geriatr Med, 14:625-632, 2023(PMID:37256475)

4) 「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2025」(日本老年医学会/編),メジカルビュー社, 2025


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