2018年2月号掲載・2025年10月15日公開

むせ混んだあとから酸素化が悪くなったら誤嚥性肺炎(aspiration pneumonia)だと思っていませんか? 誤嚥性肺炎とは不顕性誤嚥によって引き起こされるもので,通常明らかな誤嚥のエピソードはありません.発熱を認め,その後酸素化の低下を認めるといった病歴が多く,明らかな誤嚥はむしろ誤嚥性肺臓炎(aspiration pneumonitis:Mendelson症候群)を疑います.誤嚥性肺炎は口腔内のグラム陽性球菌,陰性桿菌や嫌気性菌が関与しますが,肺臓炎は細菌の関与はありません.つまり,誤嚥性肺炎であれば抗菌薬の治療が必要ですが,肺臓炎に抗菌薬は不要です(表)1)

誤嚥性肺炎が高齢者の肺炎で占める割合は高く,施設入所中の患者さんの肺炎のうち60%は誤嚥性肺炎というデータもあります2).しかし,40%はそうではないこと,また,誤嚥性肺炎は意識障害や嚥下機能障害など何らかの原因があってはじめて起こることを忘れてはなりません.目の前の患者さんに誤嚥性肺炎と診断をつける際には,なぜ誤嚥したのかを考えるようにしましょう.右下葉背側の浸潤影を見つけて,なんでもかんでも誤嚥性肺炎と診断し抗菌薬を投与してはいけませんよ.

引用文献

1) Marik PE:Aspiration pneumonitis and aspiration pneumonia. N Engl J Med, 344:665-671, 2001

2) Teramoto S, et al:High incidence of aspiration pneumonia in community- and hospital-acquired pneumonia in hospitalized patients:a multicenter, prospective study in Japan. J Am Geriatr Soc, 56:577-579, 2008


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