「救急外来ドリル」掲載・2026年1月7日公開
Wernicke脳症と聞くと,誰もがアルコール多飲患者を頭に思い描かれると思いますが,必ずしもそうとは限りません.また逆に,アルコール性肝硬変患者などアルコール多飲患者が意識障害を呈していると低血糖や肝性脳症,Wernicke脳症を想起しますが,その他の意識障害の原因が存在することも少なくありません.アルコール性ケトアシドーシス(alcohol ketoacidosis:AKA),細菌性髄膜炎,特発性細菌性腹膜炎,頭部外傷,薬剤性など多岐にわたります.
Wernicke脳症はビタミンB1欠乏が主たる原因ですが,ビタミンB1が欠乏してしまうアルコール多飲以外の原因をご存じでしょうか? 表にあるように原因はさまざまで,明らかな栄養不足が示唆される場合には忘れず対応できても,長らくブドウ糖の点滴のみで管理されていた症例や,徐々に食事摂取量が低下している高齢者が利尿薬内服している場合などは,意外と見逃されているのではないでしょうか.
目の前の患者さんにブドウ糖を投与する必要があると認識したら,常にビタミンB1の補充の必要性を考慮し,迷ったら投与開始するのがよいでしょう.ビタミンB1は副作用もほぼなく安価で投与しやすいですから.
ちなみに,高齢者の心不全症例でもビタミンB1欠乏は考えておくとよいでしょう.食事はとっていても,年とともに食べる量が減少しているなか,利尿薬など薬剤はきちんと内服しているという患者さんはたくさんいます.心不全の既往がある患者さんが下腿浮腫,呼吸困難で来院すると,どうしても服薬の問題,塩分の問題と考えがちですが,利尿薬内服に伴うビタミンB1欠乏の結果の心不全(脚気心:wet beriberi)ということもあるのです.
引用文献
1)Yuen T So:Wernicke encephalopathy. UpToDate, 2019