気管支喘息の患者で何か変な影が写っています.石灰化みたいですが,これまでに見たことない陰影でよくわかりません.
胸部単純X線写真では,右胸膜癒着,肺門リンパ節石灰化,左鎖骨上リンパ節石灰化,および,複数の肺野の石灰化結節を認める(図1).胸部CTでは,頸部リンパ節,縦隔リンパ節,および肺門リンパ節の石灰化像,また,肺野に石灰化結節が複数みられる(図2A~C).
このような石灰化リンパ節は通常は結核やヒストプラズマ症などの肉芽腫性感染症の治癒病変や塵肺症でみられる1).ヒストプラズマ症は主に米国ミシシッピ川流域でみられ,一方,日本を含む東アジア・南アジア地域は結核中~高蔓延国であり,本例は出身地から陳旧性結核症をまず考えた.活動期の結核性リンパ節炎ではCTで内部の低吸収域やリンパ節辺縁の造影効果がみられるが,非活動性病変では均質で,石灰化を伴うのが特徴である2).ただし,本例のように石灰化リンパ節が両側の肺門,左鎖骨上~頸部に及んでいるような陳旧性結核症例を見ることは稀である.治癒病変が臨床的に問題になることはほとんどないが,感染再燃の原因巣となることがある.
本例では病歴聴取により小児期に結核の治療歴があることが判明したが,念のため喀痰の抗酸菌塗抹検査を行い,陰性であることを確認した.気管支喘息発作は治療により軽快した.なお,左中肺野の透過性亢進は喘息発作の軽快により改善がみられていて,喘息発作による一時的な気腫性変化と考えた(図2D).
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