画像診断Q&A

レジデントノート 2015年10月号掲載
【解答・解説】血痰を主訴に来院した70歳代男性

ある1年目の研修医の診断

胸部単純X線写真にて心陰影の裏側に腫瘤を認める.肺癌,結核などが鑑別にあがる.次に必要な検査は胸部CTである.場合によっては気管支鏡による組織採取が鑑別に必要である.

Answer

肺分画症

  • A1:胸部単純X線写真(図1)にて左下肺野に下行大動脈とシルエットサイン陰性の57×40 mmの腫瘤影を認める.
  • A2:次に必要な検査は胸部CT検査である.血痰を認めることから血管との関係を詳細に調べるべきであり,造影CT検査を行った(図2図3).造影CTにて左下葉に腫瘤を認め,同部位に流入する血管を認めた.肺腫瘍や,好発部位(上葉やS6)ではないが結核腫も鑑別にあがる.丹念に血管を追うと大動脈から腫瘤に流入する血管があり,肺分画症が鑑別にあがり,放射線科に依頼して3D-CT(図5)を作成した.

解説

気管支鏡などによる生検対象病変かどうか判断するには過去の画像をできるだけ集め,比較することが必要である.本症例は幸い10年前の単純X線写真が手に入り(図4),比較することで,10年間で腫瘤影の増大傾向はなく,肺悪性腫瘍はまず否定的と考えた.丹念に腫瘤周囲の血管を読影することで,大動脈から分枝し腫瘤に流入する血管を同定し,左下葉は肺分画症の好発部位であることから同疾患を疑った.その後3D-CTにて大動脈から流入し,下大静脈に還流する血管が明らかとなり(図5),肺分画症の診断となった.さらに気管支鏡にて気管支腔との明らかな交通は認めず,血痰も消失したため,経過観察を継続している.

肺分画症(pulmonary sequestration)は,全先天性肺疾患の0.15~6.4%に認められる比較的稀な疾患である.正常肺・気管支と交通をもたず,肺循環ではなく体循環からの異常動脈により灌流される肺組織と定義される.治療は,気道と交通を伴い,反復する肺炎を伴う場合は手術適応である.無症状の場合は分画肺が今後感染源となる可能性があるため相対的な手術適応とされる.

図1 受診時の胸部単純X線写真
図2 胸部造影CT 肺野条件
図3 胸部造影CT 縦隔条件
図4 10年前の胸部単純X線写真
図5 胸部3D-CT

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プロフィール

北村 淳史(Atsushi Kitamura)
聖路加国際病院 呼吸器内科
山口 哲生(Tetsuo Yamaguchi)
新宿海上ビル診療所
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