画像診断Q&A

レジデントノート 2017年1月号掲載
【解答・解説】抗菌薬無効の肺炎として紹介された20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

左中下肺野に浸潤影があります.胸水はありません.抗菌薬が効かないので,薬剤性肺炎はどうでしょうか?

Answer

マイコプラズマ肺炎

  • A1:左中下肺野に浸潤影を認める(図1).左心陰影は一部でシルエットサイン陽性となり,心臓に接する浸潤影と考えられる.
  • A2:非定型肺炎(レジオネラ肺炎,マイコプラズマ肺炎)を疑い,病歴聴取,胸部CT,尿中レジオネラ抗原検査,LAMP法によるマイコプラズマ核酸同定検査などを行う.

解説

胸部単純写真では,左中下肺野に浸潤影を認める(図1).左心陰影は一部でシルエットサイン陽性となり,心臓に接する浸潤影と考えられる.舌区を主病変とする肺炎が推測される.

日本呼吸器学会の成人市中肺炎診療ガイドライン(2007年)では,市中肺炎における細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に6項目(① 年齢60歳未満,② 基礎疾患がない,あるいは軽微,③ 頑固な咳嗽がある,④ 胸部聴診上所見が乏しい,⑤ 喀痰がない,あるいは迅速診断で原因菌がない,⑥ 末梢血白血球数が10,000 /μL未満である)があげられ,①〜⑤の5項目中3項目以上,または,①〜⑥の6項目中4項目以上陽性であると非定型肺炎疑いとされている.本例では全項目が陽性であり,非定型肺炎を疑った.なお,本例は若年の健常者であることから耐性菌による肺炎は通常は考えにくい.また,抗菌薬無効の肺炎の場合に薬剤性肺炎は鑑別診断にあがるが,病原微生物による肺炎を十分に除外する必要がある.

本例は前医で5 mmスライス厚で胸部単純CTがすでに撮影されていた.病変の詳細な解析をするには不十分であったが,若年者であることから,CTの再撮影は行わなかった.CTでは舌区領域の胸膜に達する広範な浸潤影を呈し,一部にすりガラス影がみられた.気管支壁の肥厚(図2),小葉中心性の分布を疑う小結節影(図2)を認めた.これらの所見より,肺胞領域の炎症に加え,気管支〜細気管支が侵される病態と考えられ,症状(激しい咳),β-ラクタム系抗菌薬無効,との臨床経過と併せ,マイコプラズマ肺炎が最も疑われた.

マイコプラズマ肺炎の診断では,培養による分離同定は時間と手間がかかり一般診療では実施されず,血清学的検査,菌抗原検査(リボテスト,プライムチェック),遺伝子検査〔LAMP法,PCR法(実験室のみ)〕が実施されている.血清学的検査ではIgM抗体を検出するイムノカード法は成人では感度・特異度が低く,また,ペア血清による診断は迅速性がない.本例は,喀痰塗抹検査では有意菌の検出はなく,尿中レジオネラ抗原は陰性で,咽頭ぬぐい液のLAMP法によるマイコプラズマ核酸同定検査(2011年保険収載)が陽性となり,マイコプラズマ肺炎と診断した.

図1
図2
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文献

  1. 「成人市中肺炎診療ガイドライン 2007」(日本呼吸器学会市中肺炎診療ガイドライン作成委員会/編), 日本呼吸器学会, 2007

プロフィール

大河内康実(Yasumi Okochi)
JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
徳田 均(Hitoshi Tokuda)
JCHO東京山手メディカルセンター 呼吸器内科
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