胸部X線写真(図1)にて縦隔内に縦走する透亮像がある.縦隔気腫を疑いCTで確認する必要がある.
両側頸部に握雪感があり,胸部X線写真(図1)にて,縦隔内(→)と頸部(→)に縦走する透亮像を認める.CT(図2,図3)にて縦隔に気腫(○)を認め縦隔気腫の診断となった.気胸の合併はなく,CTにて肺野と縦隔には基礎疾患は認めず,いきんだことが原因の縦隔気腫と診断した.鎮痛薬処方にて自宅安静を指示し,2週間後には縦隔気腫の消退と自覚症状の改善を確認した.
縦隔気腫は,大声を出した際や運動中にいきんだ際に発症することが多く,本症例のように基礎疾患のない健常人に発症することは決して稀ではない.発症機序は何らかの誘因によって肺胞内圧が上昇し肺胞が破綻した結果,漏れた空気が肺血管鞘の被膜を剥離し,肺血管に沿って肺門部に達し縦隔気腫を発症すると考えられる.一部に食道や気道の損傷が誘因となることがあり,症状が強い場合は気管支鏡検査や上部消化管内視鏡検査で損傷部位を確認することも検討する.一般的には安静により予後良好とされるが,縦隔炎を併発する場合があり,経過観察にて悪化する場合は注意が必要である.
身体所見で両側頸部に握雪感を認めたら,それは皮下気腫であるから縦隔気腫があることを考えて胸部X線写真やCTでの検査が必要である.