画像診断Q&A

レジデントノート 2026年7月号掲載
【解答・解説】健診の胸部単純X線写真で異常を指摘された20歳代女性

ある1年目の研修医の診断

心拡大を認め特に右第2弓の突出が目立ち,右心房の拡大が疑われます.心エコーで精査をすすめます.

Answer

胸腺腫(WHO type A)

  • A1:縦隔右側に腫瘤影(図1)を認める.右心縁は不明瞭化しており(シルエットサイン陽性),縦隔右側の腫瘤が右心縁(右心房)に接していることを示す所見で,前縦隔腫瘍が疑われる.腫瘤影内方に認められる上下に走行する直線陰影は,上方で右下肺静脈に合流しており,肺静脈と考えられる.
  • A2:胸腺腫,胚細胞腫瘍,リンパ腫,胸腔内甲状腺腫,胸腺嚢胞,心膜嚢胞.次に行う検査;胸部造影CT.

解説

本症例は立位の胸部単純X線写真で,縦隔腫瘤が右心縁と重なり一見すると心拡大様の所見を示した症例である.心拡大としては右心縁のみで左心縁の拡張がみられない左右非対称の所見である.図1)に示すように,縦隔右側の腫瘤陰影により,右心縁が不明瞭化している.側面像では,胸骨下部裏面の前縦隔に腫瘤影を認める(画像は非提示).正常の側面像では,胸骨裏面,心背側,気管背側の3カ所は透亮像として認められるので,異常所見である.胸部CTのスキャノグラム(位置決め画像,図2)は仰臥位の撮影で,腫瘤陰影は立位の胸部単純X線写真と比べて頭側に移動しており,右肺門陰影に重なる腫瘤影として認められる(図2).腫瘤影と重なり肺門部の血管影が透見でき,hilum overlay sign陽性である(図2).肺門部近傍の腫瘤であれば,肺門の血管影を偏位させるか不明瞭化する(hilum overlay sign陰性)ので,本症例はこの所見のみでは前縦隔または後縦隔腫瘤と考える.右心縁上部で辺縁が不明瞭化しておりシルエットサイン陽性であり(図2),右心房に接する前縦隔腫瘤と考えられる.胸部単純CT(図3),造影CT(図4)では,右心房上部()と接して一部に石灰化を伴う充実腫瘤を認め,尾側の右心房下部とは接していない(図2図5).立位では腫瘤が重力に従い,スキャノグラムやCTよりも尾側に位置していたものと推測される.前縦隔腫瘤の鑑別として,胸腺腫,胚細胞腫瘍,リンパ腫,胸腔内甲状腺腫,胸腺嚢胞,心膜嚢胞があがるが,造影CTで増強効果があり充実腫瘤であり,胸腺嚢胞や心膜嚢胞は否定される.また,甲状腺との連続はなく,異所性甲状腺腫としては単純CTで高吸収を示しておらず,可能性は低いと判断される.CT所見から,前縦隔腫瘍特に胸腺腫を疑われ,胸腔鏡補助下胸腺・胸腺腫瘍摘出術が施行され,病理組織学的に胸腺腫(WHO type A)と診断された.

図1
図2
図3
図4
図5
  • 画像はクリック/タップで拡大します

プロフィール

藪内英剛(Hidetake Yabuuchi)
九州大学大学院医学研究院 保健学部門
鷺山幸二(Koji Sagiyama)
九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野
石神康生(Kousei Ishigami)
九州大学大学院医学研究院 臨床放射線科学分野
おすすめ書籍
  • 9784758124522
  • 9784758127523
  • 9784758127448
  • 9784758110860
  • 9784758124393
  • 9784758127394
  • 9784758127387
  • 9784758124362
  • 9784758124294
  • 9784758127332