本症例は,当初は喘鳴の症状から気管支喘息が疑われた.しかし,胸部単純X線写真で気管下部から左主気管支の狭窄を認めた(図1▶)精査のため施行された胸部CTで膜様部が保たれる気管・主気管支壁のびまん性肥厚(図2→),頸部CTで両側性耳介軟骨炎の所見を認め(図3→),再発性多発軟骨炎が疑われた.その後,肋軟骨生検で軟骨へのリンパ球浸潤を認め,再発性多発軟骨炎と診断された.血液検査で抗Ⅱ型コラーゲン抗体陽性を認めた.
胸部単純X線写真の読影において,中枢気道→肺野→縦隔(右2弓左4弓,縦隔胸膜線)→骨格,のように順番を決めてチェックしていく習慣を身につけると,所見の見落としを防ぐことができる.
再発性多発軟骨炎は,軟骨構造,特に耳介軟骨,鼻軟骨,喉頭軟骨,肋軟骨および気管・気管支軟骨に反復性の炎症が生じることを特徴とする稀な疾患で,原因は不明であるが自己免疫が関与すると考えられている.好発年齢は40〜60歳で性差はないとされる.耳介軟骨炎は初発症状として約40%,全経過中に85~95%と高頻度に病変がみられるため,本疾患を疑った場合は頸部CTで耳介軟骨や喉頭軟骨の病変の有無を検索すべきである.血清学的には,抗Ⅱ型コラーゲン抗体が30〜50%に陽性となるが,特異性は低い.関節,眼,および聴覚・前庭系も冒されることがあり,さらに稀に心大血管系,皮膚,および神経系にも病変が及ぶことがある.気道病変は予後不良と関連しており,症状としては嗄声,呼吸困難,喘鳴,頸部痛,喉頭痛,耳介の腫脹・発赤として現れる.
このように臨床症状が多臓器におよび幅が広いため,診断困難な場合がある.予後は全身性病変の範囲と重症度によって決まるが,これらは画像検査で評価できる.CT所見では,しばしば気管・気管支のびまん性の壁肥厚と狭窄が認められるが,軟骨の存在しない後方の膜様部が保たれることが多い.膜様部が冒されない点は,ほかの気管・気管支壁のびまん性肥厚をきたす疾患との鑑別点になりうる.治療は病変の広がりと重症度によって異なり,症状のコントロールおよび免疫調節を目的として,非ステロイド性抗炎症薬,ステロイド,その他の免疫抑制薬が用いられる.