診療所実習・研修をのぞいてみよう(企画:PCFMネット)

第7回 医療系学生からさらに拡がる診療所実習

  • 佐藤涼介(現PCFMネット代表,佐藤医院)

医学生・研修医受け入れ開始とPCFMネット

当院(岡山)では,在宅医療のグループ診療を行っている安田内科医院,片岡内科医院とともに1997年より川崎医科大学6年生の診療所実習受け入れを開始しました.当時,定期的な指導医の集まりで,奈義ファミリークリニックの田坂佳千初代所長と出会い,実習・教育の実践内容などさまざまなことを教わり,かなり賦活化されたことを今でも鮮明に覚えています.2000年にはじまったPCFMネット(プライマリケア・家庭医療の見学実習・研修を受け入れる診療所医師のネットワーク)にも最初から参加させていただき,PCFMネットミーティングで教育についてトークを行い,他の診療所医師との連帯感を感じ,そして貴重な情報交換の場となり,現在まで参加が続いています.2003年からは研修医の受け入れも開始しています.

看護学生・薬学生受け入れの楽しみ

看護学生との打ち上げ会.前列左から2番目が筆者.

看護学生との打ち上げ会.前列左から2番目が筆者.

さらに2009年より岡山大学看護学専攻の4年生,2010年より岡山大学薬学部5年生の受け入れを開始しました.午前は外来で医療面接を数例体験し(1例15~30分+フィードバック),午後は訪問診療に同行します.看護学生と薬学生は,今まで病院や訪問看護師,薬局薬剤師の下での実習しかなかったところに,新たに診療所医師の下での選択実習が加わったため,彼らのモチベーションは非常に高く,気合いのようなものを感じます.看護学生や薬学生の情熱やハートが伝わり,われわれ指導医は充実感を覚え,それぞれの指導教官のサポートのおかげもあり,最後の打ち上げ会では互いに満足度の高い振り返りができています.

理学療法学生や歯科研修医,さらに非医療系学生まで拡がる実習

2015年からは新しく,複数の学校から当院のデイケアセンターに理学療法学生の実習受け入れを開始しました.中心指導教官は当院PTですが,私のデイケア回診や訪問診療にも同行させ,ほかの実習先では体験することができない医師による訪問診療の同行体験を行っています.また,訪問歯科診療特化型クリニックの歯科研修医を当院の訪問診療研修として受け入れ,在宅ターミナルケアを含めた体験を可能にし,貴重な在宅医科歯科連携研修となっています.

非医療系学生についても,2014年より岡山大学工学部,経済学部の選択授業として,2015年より岡山大学の教養課程の非医療系学部中心の1年生の選択授業として「高齢者福祉」や「地域高齢者と介護」というテーマで当院デイケア・デイサービスでの実習受け入れを開始しました.その実習終了前に私がミニレクチャーと「在宅看取り」についてフリートークを行っています.日頃あまり経験することのない介護の現場を体験することにより,介護,在宅医療,生命などについて考察するよい機会となっています.

さいごに

これからの診療所実習は研修医・医学生のみならず,多職種の医療系学生受け入れも当たり前の時代になりつつあります.さらにこれからの時代を見据えた「高齢者と介護」という切り口で,非医療系学生にまで実習受け入れは拡がっていき,教育対象者のボーダレス化がはじまろうとしています.当院研修では初期研修医は他の学生と一緒になることが多く,その時には研修医と学生が2人になる機会も度々あり,学生に対する指導や助言を研修医が行うことが予想を越えたモチベーションの向上につながっており,改めてこれからの研修医は「学生に教えること」も重要な研修項目であると感じています.