総合診療はおもしろい!

Family Medicine 360プロジェクトでのスペイン家庭医療専攻医の交換留学受け入れ
鋪野紀好(千葉大学医学部附属病院 総合診療科/総合医療教育研修センター)

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日本プライマリ・ケア連合学会専門医部会若手医師部門国際交流チームは,WONCA(世界家庭医学会)の若手家庭医交換留学プログラムであるFamily Medicine 360プロジェクト(FM360)に携わっています.当チームでは,若手総合診療専門医が国際的な視野をもち,成長できるプラットフォームを提供することをミッションとしています.

総合診療の国際交流

2017年3月20日から25日まで,母国のイタリアでの勤務を経て,現在スペイン家庭医療プログラムで研修中のマッテオ・マヌーチ先生を受け入れました.マッテオ先生は,日本のプライマリ・ケアや診断推論学に興味があり,今回の短期交換留学プログラムに参加されました.

初日は所属施設を超えた当チームのメンバーで「お・も・て・な・しin東京」を企画・開催し,浅草寺および歌舞伎座を訪問し,日本の伝統文化を通じた国際交流を行いました.

千葉大学病院総合診療科では,外来診療,診断推論カンファレンス,家庭医療セミナーに参加していただきました.外来診療においては,初診外来患者の診察や,指導医との診断およびマネジメントに関するディスカッションを通して,生物・心理・社会的問題が複雑に絡み合った事例を解決する臨床推論の方略の存在を新鮮に感じていただけたようです.診断推論カンファレンスでは,生坂政臣先生(千葉大学医学部附属病院 総合診療科)の指導のもと,診断に合致する点・合致しない点にこだわり,診断の暗黙知を言語化するカンファレンスに感動されていました.家庭医療セミナーでは,藤沼康樹先生(日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター)を招聘し,診療所で遭遇した対応困難事例のマネジメントを通じて,health-seeing behaviorやsocial prescribingなどのフレームワークをともに学びました.診断推論学と家庭医療学のスキルを合わせて修得できるのは総合診療の強みであり,やり甲斐を感じるところです.

家庭医療セミナーの様子(前列左から生坂政臣先生,藤沼康樹先生,マッテオ・マヌーチ先生,筆者)

マッテオ先生には筆者が定期診療を行っている地域密着型市中病院である,いすみ医療センターでの研修にも参加していただきました.フリーアクセスが担保されたプライマリ・ケア外来で,質の高い医療が提供されていることに感銘を受けられていました.訪問診療では,超高齢社会を迎えるわが国での地域包括ケアシステムについて理解を深められました.

最終日には,スペインにおけるヘルスケアシステムとレジデント評価について講演を行っていただきました.日本とスペインの相違点についてディスカッションし,グローバルスタンダードなプライマリ・ケアのあり方を検討しました.

本プログラムを通じて

受け入れ側としても,今回の国際交流を通じて馴染みのない南欧のプライマリ・ケア研修と診療の実態を知るたいへん貴重な経験ができました.国際交流はグローバルな視点を醸成し,自分を成長させる素晴らしい機会になります.総合診療医をしていたからこそ,たいへん貴重な機会に恵まれました.ぜひ,初期研修医の頃からチャンスがあれば積極的にご参加いただければと思います.今後もこのような素晴らしいプロジェクトが実施され,若手医師の国際ネットワークが構築できればと思います.

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