実験医学 2017年10月号 Vol.35 No.16

オルガノイド4.0時代

小さな臓器が拓く次世代研究のデザイン

  • 武部貴則/企画
  • 2017年09月20日発行
  • B5判
  • 139ページ
  • ISBN 978-4-7581-2500-0
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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発生プロセス,再生医療,創薬スクリーニングと,多分野との融合で無限大の可能性を発揮する人工のミニ臓器「オルガノイド」が,日本発の技術とクリエイティビティを武器に,その研究の第4段階を迎える!

目次

特集

オルガノイド4.0時代
小さな臓器が拓く次世代研究のデザイン
企画/武部貴則
概論─オルガノイド4.0時代ー次世代のオルガノイド研究のデザイン【武部貴則】
オルガノイドを対象とした研究は,この100年の間に生じた3つのブレークスルーを起点として急速な進化を遂げた.特に,ヒトの生物学・進化学・医学・創薬・再生研究など多分野における革新的なツールとして,オルガノイドの利用が期待されている.本特集では,オルガノイド3.0時代を牽引してきたわが国のトップ研究者とともに,次世代のオルガノイド研究(Organoid 4.0)の行く末を考察したい.
眼杯オルガノイド×Computational Biologyーin vitroとin silicoの相補的アプローチ【奥田 覚,永樂元次】
器官形成は,細胞の自己組織化現象の1つであり,未解明な問題を多く含む魅力的な生命現象である.この自己組織化現象を理解するためには,動的な細胞要素から構成される多細胞システムを多角的に捉える必要がある.その一手段として,急速に発展するオルガノイド技術や観察・計測・定量技術に加えて,汎用物理モデルによる仮想実験技術を組み合わせた相補的アプローチが有用かもしれない.本稿では,器官形成における動的な多細胞システムに着目し,眼杯オルガノイドを題材として,細胞の自己組織化を理解するためのオルガノイド技術の有用性を整理し,物理モデルを組み合わせた相補的アプローチの試みについて紹介する.
がんオルガノイド×Human Cancer Biologyーオルガノイドが切り拓く新しい大腸がん生物学【佐藤俊朗,下川真理子,太田悠木】
がんはゲノム異常に端を発し,生体内で致死的な悪性形質を高めていく.次世代シークエンサー技術の進歩により,ヒトがんのゲノム異常の全貌が明らかになりつつあるが,がん遺伝子異常を要素還元的に,がんの形質と結びつけることは依然として困難であった.近年に登場したオルガノイド技術は,圧倒的な効率の高さで,ヒト大腸がんの培養を可能にした.さらに,ゲノム編集技術を組合わせることにより,がん遺伝子やがん幹細胞の生物学的な洞察につながる研究成果がでてきた.本稿では大腸がんを例に,オルガノイドによる,“新しいヒトがん生物学”について概説する.
腎オルガノイド×Developmental Biologyー腎臓の形態形成過程の構成的理解と再現【太口敦博,西中村隆一】
腎臓は三次元構造のうえに機能する臓器であり,その複雑かつ洗練された形態形成のプロセスは,古くより発生生物学者を魅了してきた.マウスをはじめとする遺伝子改変動物を用いた研究は,腎臓の発生過程における主要な転写調節因子やシグナル分子を次々に明らかにした.一方で,近年注目されるオルガノイド研究は,介入実験の容易さや解析における時空間的分解能の高さを生かし,個体を対象とした遺伝子工学的手法では迫りきれない細胞系譜選択機構や組織のパターニングプロセスの解明,さらにはヒト組織を対象とした発生工学へ扉を開こうとしている.
消化管オルガノイド×Physiologyー消化管オルガノイドの基礎生理学研究への応用【粟飯原永太郎,松浦 徹】
消化管オルガノイドはおのおのの消化管組織由来の幹細胞を起点として,細胞増殖および分化を経て形成される消化管上皮の三次元初代培養であり,動物の組織レベルの生理的な反応をディッシュ内で再現することができる新しい細胞実験系として注目されている.またオルガノイドはヒト生検組織からも作製できるため,純粋なヒト消化管上皮細胞を用いた基礎・病態研究を行う強力なツールともなる.本稿では消化管オルガノイドを活用した研究について基礎生理学的アプローチを中心に,生体組織とオルガノイドの相違点も交えて解説する.
肝臓オルガノイド×MedPhys Biologyー物理視点から紐解くオルガノイドの自律形成メカニズム【吉川洋史,東郷祥大,武部貴則】
近年,細胞自身に自律的に組織を形成させる自己組織化アプローチにより,さまざまなオルガノイドを作製できることが報告され,その指導原理の解明に関心が集まっている.一方,結晶化をはじめとする粒子の自己組織化現象はすでにさまざまな物理モデルが提唱されおり,細胞の自己組織化メカニズムを解明するためには,生物学だけでなくこれら物理学的な視点も取り組みつつ原理推定を行うことが重要であると考えられる.そこで本稿では,粒子の凝集と配列に関する新・旧の物理モデルを紹介するとともに,物理学的な観点からの肝臓オルガノイドの形成や機能発現のメカニズムについて概説する.
がんオルガノイド×Drug ScreeningーCTOS法を利用したオルガノイド作成とドラッグスクリーニング【近藤純平,井上正宏】
がんオルガノイドは従来の二次元培養樹立がん細胞株と比べてより患者腫瘍の性質を維持した細胞培養技術であり,さまざまな分野において従来の細胞株では見出せなかった発見につながることが期待されている.なかでも,がん治療薬のドラッグスクリーニングはがんオルガノイドの利点が大きく生かせる分野として注目されている.本稿では,近年のがん組織モデルの進歩とオルガノイド培養法の位置づけについて概説し,われわれの研究室で開発したがんオルガノイド技術(CTOS法)を例にドラッグスクリーニングへの応用の実際を解説する.
内胚葉オルガノイド×Transplantationー炎症性腸疾患へのオルガノイド移植療法の現在【髙橋純一,岡本隆一,渡辺 守】
組織の立体構造を再現するオルガノイドは病態の解明に加え移植のリソースとして利用できる可能性を秘めている.近年では組織幹細胞由来のオルガノイドに加え多能性幹細胞からさまざまな種類のオルガノイドを分化誘導することが可能となってきており,幅広い疾患への移植療法への応用が期待される.当科で開発を進めている炎症性腸疾患に対する腸管上皮オルガノイドの移植療法を例にあげながら内胚葉オルガノイドが切り開く移植療法の新世代について解説する.

連載

News & Hot Paper Digest
がん細胞によるがん細胞のためのニッチ【妹尾 誠】
プロテオームの革命児の発見【養王田正文】
ゲムシタビン耐性は細胞内CTP合成の亢進により引き起こされる【河野 晋】
脂っこいものが食べたくなる? 謎の脳領域ZIの役割【藤田智史】
幹細胞・再生医療研究におけるメディア報道への意識【標葉隆馬】
カレントトピックス
ヒト多能性幹細胞から造血幹・前駆細胞の誘導【杉村竜一】
はじめて解像された膜タンパク質とリン脂質の相互作用のダイナミクス【乗松良行,豊島 近】
水を感知する味覚受容機構の解明【Dhruv Zocchi,市木貴子,岡 勇輝】
IgA産生と腸内細菌叢の多様性を制御するM細胞誘導細胞の発見【永島一樹,高柳 広】
Update Review
UPSの未解決問題に挑むーついに明かされるプロテアソーム分解の制御機構【佐伯 泰,土屋 光,大竹史明,田中啓二】
クローズアップ実験法
光応答性阻害ペプチドの生化学的機能アッセイ【村越秀治】
創薬に懸ける~日本発シーズ、咲くや?咲かざるや?
トシリズマブ誕生物語―日本発(初)の抗体医薬【大杉義征】
予言するシミュレーション
転写因子NF-κBのオルガネラによる制御を4Dシミュレーションで予言する【市川一寿】
私のメンター
Yi Zhang―獅子奮迅するエピゲノム研究の兄貴分【束田裕一】
ラボレポート独立編
アメリカ・ジョージアからの船出!ーDepartment of Cellular Biology, University of Georgia【神山大地】
未来をつなぐ風
平成29年度「新学術領域研究」が決定!
Opinion
会社で働きながら博士号を取得する,ということ【川出野絵,池田明加】
バイオでパズる!
割れたシャーレ【山田力志】

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