バイオビジネス英会話

アメリカバイオビジネス界で活躍している筆者が毎日使用しているであろう日常的な表現が盛りだくさんであり，ぜひ外資系に勤める卒業生に薦めたい１冊である．間違いなく彼らのバイブルとなるであろう．

また，「トラブルを起こしている研究者の仲介をする」など，これまでになかった観点から編集されており，われわれ研究者にとっても非常に興味深い．特に，内容を伝えるための英語に終始することなく，人間関係をも配慮し，“いかにスムーズに伝えるか”に力が注がれている点に拍手をおくりたい．

実際ネイティブスピーカーの研究者と話す際に戸惑ってしまうのは，微妙なニュアンスの問題である．拙い英語でも内容はなんとか伝えることができる．しかし，ニュアンスまではうまく伝わらない．しまいには誤解を招いてしまったりする．

そして，何よりも困るのは，「うまく反論すること」である．本書は，英語だけでなく英語社会のものの捕らえ方や会話をスムーズにするための工夫など，筆者の体験に基づいたサバイバル術をまじえることにより，「ああ，そうか，こういう風に言えばいいのか」「アメリカ人はこう考えるから，誤解されるのか…」とこれまでになかった観点から，実践的な生きた英語を教えてくれている．すなわち，ただ「謝る」ではなく「反省していることが伝わるように誠意をもって謝る」英語が記されている．

アメリカの社会を生きている筆者の人となりや苦労がそこここに見え隠れし，この本を読んで私にも少し勇気が湧いてきた．何だか，英語でギャフンといわせたくなってきた．

書評執筆：白井康仁（神戸大学バイオシグナル研究センター）

英会話本というものが本屋の書棚を賑わしてずいぶんと経っているのだろう．こんなにたくさんあるけどどう違うの？ 役に立つの？と思ってしまうのだが，そんな中でこの「バイオビジネス英会話」はメキシコ系アメリカ人に見間違えられるという筆者の手によってバイオビジネスマン，研究者向けに書かれたもので，読んでいると本人の活躍が生き生きと伝わってくる，読み物のようになっている．

内容は「オフィス編」「学会，セミナー編」「特許，契約編」と，さまざまな状況のダイアログとそれに関連した筆者の経験談や考えなどが綴られている．各ダイアログは実践的で，言いたい文章が本の中に見つかるのは嬉しいし，評者などは「ああ，あの時はこう言うたらよかったんや」と後悔することもしばしばであった．が，評者からすると後者の方が面白いし役に立つ．

筆者が言うように「たえず話をする」などは英会話修得の基本であるが，改めてうなずかされるように書かれている．ダイアログはさまざまな局面のシミュレーションに役立つし，経験に基づく提案は英会話の準備に余裕を与えるはずである．

本の購入者の心情は自分の力量と目的にあったものを買いたいというのが普通と思われるが，そういう意味ではこの本の対象者のレベルが少々はっきりしないと感じられた．また評者の好みで言えば，専門用語や日米の違いに基づいた交渉事例を長めにまとめたダイアログがもう少しあってもよかった．そうは言っても従来の英会話本に隔靴掻痒の感を持っていた人には本書を手に取ってみることをぜひお勧めする．

某TV番組で世界の富の構造におけるバイオビジネスの立場を取り上げていたが，本書でもまさに同様のことが記されていて，そういう意味でも時宜を得たものともいえる．

書評執筆：福嶋伸之（北海道大学大学院医学研究科 分子生化学講座分子医化学分野）

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• 【本書名】バイオビジネス英会話〜研究者やビジネスパーソンにすぐ役立つ！交渉・サバイバル術
• 【出版社名】羊土社

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