クローズアップ実験法

2025年7月号 Vol.43 No.11 詳細ページ
SDS-PAGE 後の変性GFPを蛍光検出する方法
白鳥未紗,大金賢司
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SDS-PAGE後の変性GFPを
蛍光検出する方法
白鳥未紗,大金賢司

何ができるようになった?
蛍光検出タグとして汎用される GFP は変性条件の電気泳動である SDS-PAGE 後の蛍光検出はでき
ず,抗体を用いた検出が必要である.SDS-PAGE 後のゲル中で変性した GFP をリフォールディング
する本手法により GFP のゲル内蛍光検出が可能になった(EGFP などいくつかの GFP の種類ではう
まくリフォールディングできないこともある)
.

必要な機器・試薬・テクニックは?
α- シクロデキストリンと蛍光検出可能なゲル撮影装置さえあれば,あとは通常の SDS-PAGE 等に
必要な試薬・機器があればよい .泳動後のゲルを 30 分間リフォールディングバッファー中で振盪す
るだけであり,簡便に一度変性した GFP を蛍光検出できる.

はじめに

DTT などを含む Laemmli バッファーと混合し,加熱

緑色蛍光タンパク質(green fluorescent protein:

してサンプル中のタンパク質を変性させる.この工程

GFP)をはじめとした蛍光タンパク質は,蛍光タンパ

では,タンパク質の立体構造はほどかれ SDS でコート

ク質タグとして,生細胞内での融合タンパク質の細胞

された状態になると考えられており,タンパク質の立

内局在や動態の可視化に汎用されている.また,サイ

体構造に依存せずに分子量に応じた分離・検出を可能

ズ排除クロマトグラフィーや非変性電気泳動における

にしている.GFP の蛍光には,自己触媒反応による発

検出法としても有用であり,構造生物学の分野では高

色団の形成と ,それを囲むβ- バレル構造が必要であ

発現させたタンパク質の量や質の確認,発現条件等の

る.発色団自体は変性条件で壊れることはないが,β-

スクリーニングに活用されている 1).

バレル構造を含む GFP の立体構造が壊れるため,SDS-

GFP は検出タグとして便利ではあるが,変性条件の

PAGE 後の蛍光検出ができない.そのため SDS-PAGE

電気泳動法であるSDS-PAGE 後に蛍光検出することは

後に G F P を検出する方法として,抗 G F P 抗体を用い

できない.通常 SDS-PAGE では,サンプルをゲルに

たウエスタンブロットが用いられている.ウエスタン

ロードする前に,変性作用の強い SDS や還元剤である

ブロットは ,基本的かつ汎用的な実験法ではあるが ,

Fluorescence detection of GFPs after denaturing SDS-PAGE
Misa Shiratori 1)/Kenji Ohgane 1)2):Department of Chemistry and Biochemistry, Graduate School of Humanities and Sciences,
(お茶の水女子大学大学院
Ochanomizu University 1)/Department of Chemistry, Faculty of Science, Ochanomizu University 2)
人間文化創成科学研究科理学専攻 1)/ お茶の水女子大学理学部化学科 2))

実験医学 Vol. 43 No. 11(7 月号)2025

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