電子顕微鏡の歴史は古く,1930年代にはシーメンス社によって世界初の商用装置がすでに開発されていた.一方で,電子顕微鏡で生体高分子を観察するためには多くの課題があり,近年まで,ウイルス粒子やリボソームのような巨大分子でないと高分解能の構造情報を得ることは困難であった.長年にわたる多数の研究者による貢献によって,生体試料を本来の構造を保ったまま観察するための試料凍結法の確立,電子顕微鏡による二次元像から立体構造情報を再構成する単粒子構造解析法の理論構築,および電子を直接検出する検出器(カメラ)の開発などが実現し,クライオ電子顕微鏡は今まさに「分解能革命」とも称される開花期を迎えている.
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