mRNAからタンパク質への翻訳は,リボソームがその中心を担うプロセスである.翻訳が活発に行われる場所としては小胞体(ER)がよく知られているが,リボソームやmRNAはミトコンドリア,ペルオキシソームの表面近傍,神経細胞の神経突起などにも局在することが報告されている.翻訳の制御機構は明らかになりつつあるが,細胞内における翻訳の場所やオルガネラ近傍に局在するオルガネラ特異的リボソームの構成・機能には未解明な点が多い.これは,高解像度でリボソームの局在を可視化する手法や,オルガネラ特異的なリボソームを解析する手法が十分に整備されていなかったためである.こうした課題に対して,Zhangらは,リボソームの可視化を可能にする膨張顕微鏡法(ribosome expansion microscopy:RiboExM)と,その構成因子の解析を可能にする光遺伝学的近接標識法(Avitag-specific location-restricted illumination-enhanced biotinylation:ALIBi)という2つの新規技術を開発した.これらの手法により,ERやミトコンドリアに局在するリボソームの構成や,相互作用因子を同定し,翻訳制御の新たなメカニズムを報告した(Zhang Z, et al:Science, 387:eadn2623, 2025).
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DOI:10.18958/7757-00004-0006069-00