[Opinion―研究の現場から]

本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第51回 研究者の飲みニケーション

「実験医学2014年9月号掲載」

「大西研の佐谷です」.がん若手メンバーの前で掴みを取る私のボスの鉄板小ネタである(笑).がん若手飲み会なる交流会を定期的に行うなか,「大西さんのこと聴いていますよ」「今度後輩を連れてきてもいいですか?」などとお声掛けいただくようになり,ボスから「若手の間では僕よりも君の方が有名やからなー」と言われることがネタの由来である(もちろんそんなことには成り得ないのだが).

文部科学省の科学研究費補助金「特定領域研究」がん研究に係わる特定領域研究(がん特)の頃から続く支援活動『がん若手研究者ワークショップ』は今年第15回を迎える.座長も若手参加者が務め,朝から晩まで全員が発表(口頭またはポスター)し,非常に活発な討論を交し合い,そこからさらに深夜遅くまで(朝早くまで)皆で飲み明かすという,がん研究者を志す若手が集う由緒ある研究飲み合宿である.これまでに参加された先輩方のなかには現在,教授やチームリーダーとして研究室を率いておられる先生方や海外で活躍される先生方も数多くおられる.私は大学院生のときに一度,ポスドクになってからも二度参加させていただき,その度に大きな刺激や知識と多くの素晴らしい友人を得られたことは研究生活を営む上で大きな糧となっている.これらはひとえに若手支援委員の先生方の惜しみないサポートのおかげであるが,合宿の懇親会で先生方は口を揃えて「若手のうちから積極的に横の繋がりをもって切磋琢磨できる仲間をつくりなさい.特にこのような場では皆で酒を飲み交わしながらどんどん親睦を深めなさい」とコメントされる.先生方が追加で差し入れてくださる大量のお酒は若手メンバーの親睦速度を速め,合宿が終わる頃には直後に開催される癌学会での再会を約束している.私が参加したなかでは特に2011年の合宿で強烈な個性の若手メンバーが多く,最終夜に皆の心が1つとなった異常な盛り上がりは,現在もがん若手飲み会で集まる友人をつくるには必然の流れであった.以降,癌学会や分子生物学会などの際には各開催地で,新規メンバーを含む40〜50人が集まるがん若手飲み会を行っており,親睦の輪はどんどん広がっている.

がん若手飲み会を続けるうちに色んな研究室の若手メンバーが集まる意義についても考えるようになった.もちろん同窓会的に集まることも新しい友人ができることも楽しいし,研究分野や興味の近い有志で共同研究を行うことも稀にはあるが,せっかく飲み会を開くことで希望者が参加しやすく,普段知り合えないようなメンバーと酒を飲み交わしながら昼間では話しにくいこともぶっちゃけて話すことができる雰囲気をつくることができているのだから,もっと積極的に情報交換を行い,各々の研究・技術の融合による新たな挑戦を行ったりもできるのではないだろうか.

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がん若手飲み会がこのような挑戦を可能にするための敷居を下げるような場になればと考え,最近は幹事特権として他分野の若手メンバーや企業の研究者にもお声掛けして合同飲み会も企画している.個人的に知り合う機会があった企業の研究者〔といってもいきなり会社に名指しで電話を掛けたのだが(笑)〕同士を引き合わせることができたのも飲み会ならではであったし,新たな技術開発の話も進みつつある.また,著名なPIやチームリーダーの先生方をゲストとしてお招きし,先生方との親密な交流を積極的に行うことでがん若手メンバーの活性化も試みている.第一回ゲストの私のボスに続いて北村俊雄先生(東大医科研),小川誠司先生(京大医学部)とご参加いただきがん若手飲み会を盛り上げてくださり,若手メンバーにとって非常によい刺激になったと思う.このような意義ある『研究者の飲みニケーション』の場に,本稿を読み考えを同じくする若手研究者の皆様の参加やこれからゲスト参加をお願いする先生方には笑顔のご快諾を切望する.

大西伸幸(慶應義塾大学医学部)

※実験医学2014年9月号より転載