UJA Presents 留学のすゝめ〜世界中の先輩が,あなたにとっての「ベストな留学」導きます。
  • 著/佐々木敦朗(シンシナティ大学癌研究所)
  • 第7回編集リーダー/今井祐記(愛媛大学),黒田垂歩(バイエル薬品株式会社)
  • 編集協力/UJA編集部
What is UJA?

UJA (United Japanese Researchers Around the World) は,世界に拡がる日本人研究者の一人ひとりがつながり,互いを高め合うためのプラットフォームです.3年,30年,300年先に日本のサイエンスが世界をリードする,より明るい未来へ向けて取り組んでいます.発足の経緯や世界各地のUJA参加コミュニティ情報は,to wwwUJAウェブサイトよりご参照いただけます.本連載とタイアップした留学体験記の公開,コンテンツ拡充のためのto wwwアンケート活動も行っております.

第7回人と人との絆が未来を拓く

飛行機がゆっくりとゲートにおさまり,すっかり馴染んだエンジン音がこだまし消えました.ガタン,扉が開きます.フライトの疲労と興奮,不安と希望の入り混じるなか,いよいよ留学生活の始まりです!言葉も住居も日本と全く違う土地での生活は,孤独や力の足りなさを感じることも多々あります.はじめの数カ月は,萎縮したり,ストレスを受けたり,“帰りたい!”と思ったりするかもしれません.しかし,いつの間にかギャップが埋まり,“留学してよかった”と感じるときがきます.あまり意識されませんが,留学で大切なことを身に付け,次のステージに入ったことを示す素晴らしい瞬間です.この地点に到達する時間は,人それぞれですが,いくつかのコツやポイントがあるようです.先輩たちはどのように進んで行かれたのでしょうか?

こんにちは,全世界日本人研究者ネットワーク(UJA)会長を務めております,シンシナティ大学の佐々木敦朗です.本連載では,留学に興味のある大学院生や研究者に向けて,“先輩の貴重な留学体験記”を伝えていきます.第4回〜6回[4][5][6]では,留学先の探し方,そしてどのように受け入れOKのオファーを獲得するかディスカッションしました.今回は,研究と生活をより実り多きものにするポイントについて,先輩たちの経験をもとに一緒に考えていきましょう.留学だけでなく日本での私たちの研究人生への大きな糧となるヒントが詰まっています.

……その交(いよいよ)広ければ、一身の幸福愈大なるを覚るものにて、即是れ人間交際の起る由縁なり。(中略)凡そ世に学問と云い、工業と云い、政治と云い、法律と云うも、皆人間交際のためにするものにて、人間の交際あらざれば何れも不用のものたるべし。

―福澤諭吉「学問のすゝめ」九編より

なんてったって人間関係!

意外に思われるかもしれませんが,実り多き留学になるかどうかは,人と人とのつながりで90%決まるといっても過言ではありません.福澤諭吉先生は「学問のすゝめ」 の中で,私たちは人間交際を拡げることでより大きな幸福を得ること.そして,学問,工業,政治,法律は人間交際のためにあると確言されています.しかし留学先では,人との交際において,ゼロからのスタートになります.さらに言葉も価値観の共有もおぼつかない,不安定な状態です.

これらは確かに留学初期の大きなストレスとなりますが,一方で,人と人とのつながりの大事さを実地で学び,交際を積極的に拡げていく力となります.先輩たちの体験談は,人と人とのつながりが,次のような好循環を生み出すこと示しています.

  • 留学地での研究の発展
  • 異分野,異業種の方からの多岐にわたるアドバイス
  • 充実した生活
  • キャリアアップ,ジョブ獲得
  • 生涯続くであろう交友関係

このように人と人とのつながりは,私たちが留学で期待する成果へ直結しています.しかしながら,“華々しい研究成果=留学成功”のイメージが,人間の交際促進へのブレーキになっているケースがあります.私の最初のUCSD留学も,その1つです.自分の研究のみに集中しすぎ,仲間をうまくつくれませんでした(第2回参照).幸いボスとの関係は良好でしたので,悲惨な結末は避けることができました.ボスとの仲はよいに越したことはありません.ボスに頼りにされ大事な仕事やレビュー,グラント申請を回してもらう方がいる一方で,ボスとの関係が築けず,不安とストレスを受ける方,突然の解雇を言い渡される方がいるのが現状です.かくゆう私もアブナイ時期がありました.参考になるかもしれないので,シェアさせてください.

ボスとの関係 “It’s still HOT!”

留学したての頃,私は英会話のニガテ意識と思い上がりから,ボスであるFirtel博士へのアップデートをあえて避けてしまっていました.ラボに参加した3カ月後,「君はちゃんとやってるのか?」とキツイ調子の言葉をいただきました.“ショック”でした.研究を任されていた日本の感覚を持ち込んでしまったことが原因でした.そして,冷や水をかけられたように思いました.今思えば当然のことで,私はラボにとってはいち新人,テーマを理解しているか,ラボのシステムに馴染んでいるのか,Firtel博士は大変心配されていたのです.

その後,意識して月に2回くらい研究状況についてアップデートするようにしました.ある朝7時.X線フィルムを現像すると,とてつもなく“!”な結果.ボスのオフィスへ駆け込み,フィルムを渡しました.まだほんのり温かさを帯びたフィルムに,Firtel博士は「It’s still Hot!」と大興奮して喜んでくれました.ここから一気に信頼関係は強まりました.ハーバード大学でも,“!” な結果がでたときに,Cantley博士へすぐに報告しました.彼らも少し前までは実際に手を動かし,データを見ては一喜一憂していた研究者.ほやほやの“ホット”なデータを共有するのはボスにとっての至上の喜びなのです.

Firtel博士とCantley博士は,私がラボを卒業するときに,必要な研究材料があれば持っていきなさい,どのテーマでも応援するからと,送り出してくださいました.両博士の素晴らしいお人柄のお陰ですが,すべての卒業生が,両博士のご厚情を受けられているわけではありません.このように,ボスとの良好な関係は,あなたの留学後への大きな助けになります.一方で,ボスとのトラブルに頭を悩ませるのは,日本でも海外でも共通です.大事な点ですので,もう少し見ていきましょう.

ボスとの相性

留学先のボスが,どのようにラボメンバーを扱うのか,ボスの対応は早いか,ラボでの自由度,ボスの器と魅力がいかほどかは,あなたにとり切実なファクターです.ボスとの折り合いがつかず,飛び出される方もいます.しかし,ボスへの不満をいくら嘆いても解決しません.ネガティブな言動は,周囲に毒を振りまいているようなもので,あなたにとってのマイナスになりかねません.

実は,ボスとの相性は,あなた次第でかなり何とかなります.あなたの周囲には,指導教官とうまくいっている人,そうでない人,それぞれのケースがあるのではないでしょうか.一般的に,直感的タイプと論理的タイプ,または直接コントロール型同士はそれぞれ両者の間でストレスが発生しやすいと考えられています.大事なことは,人間にはいろいろな気質があることを踏まえ,あなた自身が,それぞれのケースでの対応を学ぶ姿勢を持つことです.全世界共通の処方箋を5つ挙げます.

ⅰ)ボスとの共通点を増やす

ボスが朝型なら朝型へ.野球が好きなら,野球の話題.研究ゴールの確認も共通点です.ボスの良い点をそっくり真似るのは,素晴らしい共通点になります.

ⅱ)頼りになる存在となる

ボスから依頼が回ってきたら,速攻で仕上げましょう.データについても,常に見せられる形,そしてスライドとして使ってもらえるようにしておくと,あなたの株は大きく上がります.技術や知識でラボの他のプロジェクトへ貢献したり,コンストラクティブ(建設的)な発言をしていくメンバーは,ボスにとって非常にありがたい存在です.

ⅲ)ともにラボを盛り立てる

ラボでのイベント(BBQ,クリスマス会)などに積極的に参加すると,メンバーだけでなくボスとの絆も深まります.これらのイベントは,ラボのみんなが仲良くできることが目的です.進んで参加し楽しんでいるメンバーの姿は,ボスとしては嬉しいものです.ボスと問題を抱えている方は,ラボのイベントを敬遠しがちです.気持ちは分かるのですが,自ら問題をこじらせてしまっています.

ⅳ)にっこり元気よく挨拶!

非常に簡単かつ効果絶大なアクションです.この逆をやってしまうと,なかなか歩み寄れません.

ⅴ)誠実に堂々と接しよう

立場や言葉は違っても,あなたもボスも同じ人間同士.誠実さは人間関係の根源です.言葉が伝わらず誤解を受けることもありますが,誠実に態度で示していくのが大事だと思います.信頼関係は一朝一夕では築けません,少しずつ深めていくものです.

あなたは,これからの人生のいろいろな場面で,人間関係や相性による問題に遭遇するかもしれません.ボスがよい人物であれば,あなたはボスの振る舞いを学び身につけていけるでしょう.そして,反面教師から得られることは,非常に“身に沁みる”ものです.あなたがキャリアアップして,部下を持つ立場になるときがきます.あなたが部下と接するスタイルやリーダーシップには,これまでのボスからの学びが大きく反映されます.ぜひ,どのようなボスからも学び,あなた独自のリーダー像を培ってください.

人と人とのつながりを拓く3つの鍵

……多くの事物に接し博く世人に交り、人をも知り己をも知られ、一身に持前正味の働を逞うして自分の為にし、兼て世の為にせんとするには、……

「学問のすゝめ」十七編のくだりです.私たちが留学に期待することを,見事に言い表しています.福澤諭吉先生は,これを達成するための3つの鍵を挙げています.1つずつ,見ていきましょう.

第一 言語を学ばざるべからず。文字に記して意を通ずるは固より有力なるものにして、文通又は著述等の心掛も等閑にすべからざるは無論なれども、近く人に接して直に我思う所を人に知らしむるには、言葉の外に有力なる者なし。

第一の鍵は,交流の場で伝える力です.私たちは科学論文を読みますが,やはりセミナーや学会で,直接研究者の話を聞くときに,その発見は伝わってきます.逆に,素晴らしい仕事だと論文から知っていても,発表を聞くと,どうも腑に落ちない気持ちになることもあります.このように言葉は,最も意志を伝える力があります.留学はコミュニケーションする力,すなわち,あなたの考えを理解してもらう力を養う絶好の場です(第2回参照).世界の人々がどのように自分の考えを伝えているのかも,参考になります.

第二 顔色容貌を快くして、一見、直に人に厭わるゝこと無きを要す。(中略)顔色容貌の活溌愉快なるは、人の徳義の一箇条にして、人間交際に於て最も大切なるものなり。

なんと! 第二の鍵は,身なりをキチンとして人に不快感を与えないこと,活発で明るいことです.いわば外見が大事ということです.たしかに私たちは,人と会ったときに,身なりや表情そして会話から,どのような方なのかを判断しています.一流と目される研究者の方々は,とびきりの笑顔に,がっしりした握手 (男性の場合),話していて気持ちよい方々が多いように思います.慎み深さを重んじる日本の文化からは,なかなか難しいところがあるかもしれません.表現し過ぎかな……と思うくらいで,ちょうどよいと思います.

第三 道同じからざれば相与に謀らずと。(中略)恐れ憚る所なく、心事を丸出にして颯々と応接すべし。(中略)人にして人を毛嫌いする勿れ。

第三の鍵は,分野や業種の垣根を越えた交友です.この節のなかで福澤諭吉先生は,学者は学者,医者は医者でかたまり,業種を越えた交流を避けることが多い点を指摘し,これは大きな間違いであることを述べています.そして,生涯の親友を得ることは,偶然に頼むことになるけれど,多くの人と接することでそのチャンスが増える.人生は何があるか分からないので,異業種の友人であっても,将来助け合うことになるかも知れないと述べています.

留学では,研究者だけでなく,製薬企業の方はもとより,製造,政治,小売り業など,さまざまな仕事をされている方と知り合いになる機会が増えます.私はボストンで,生命保険会社の方,精密機器,情報産業の方と,夕食を共にする会に参加しました.皆さまがそれぞれの視点で,世界への貢献を考えられていて,お互いの分野で意外な接点などもあり,世界を見る目が大きく変わりました.このはじまりも,とある場所で目が合ってニッコリ笑ったところからです.胸襟を開いて,いろいろな方と交友してみてください.あなたと日本の力になります(図1).

図1 留学先での垣根を越えた人と人とのつながり

◆  ◆  ◆

人と人のつながりから生み出される力.日々の議論は,サイエンスを謳歌するための原動力であり,大胆果敢な研究に邁進するための勇気となります.紀元前より,サイエンティストはさまざまなバックグラウンドを持つ人々との交流から,サイエンスを前進させてきました.留学では,自分一人の限界を知り,日本人同志,留学生同士といった同胞意識が生まれます.こうしてもたらされる,“人と人とのつながり”.そして,その大切さに気づくこと.これが留学における1つの宝だと私は思います.この宝は,日本においても見つけることは可能です.

あなたは,これまでの人生の中で,何度も新しい扉をくぐり,人と人との絆を築いてきました.繰り返しのように見える日常の中にも,人と人とのつながりを築く機会は散りばめられています.つながりの大切さを意識すれば,積極的に交流がもてます.胸襟を開けば,交流から深いつながりが生まれます.深くつながれば,お互いの人生で得た英知を共有できます.大切なのは言葉ではありません,あなたの気持ちと明るく誠実な姿勢が明日のつながりへの種子となります.いつの日も,どこにいても,どんな状況でも明日への扉はあなたを待っています.So lets’ open the mind and find friends!

コラム国際社会に見るモテ指数

欧米ではアイコンタクトが大切.私(佐々木)は意識して目を合わせるようにしていました.ところがある日,「フランスでは議論を大切にするんだ,いろいろ言ってるけれど許してくれ」と同僚のフランス人から言われました.ようやく自分が“メンチ切って”話していたことに気づきました.無表情で,目をそらさず話す私は,それはコワい顔してたと思います.散髪に行くのが億劫で髪の毛は伸ばし放題 + よれよれTシャツ.国際モテ指数=5.

ちなみに,そのフランス人の同僚のSylvainは,服装だけでなく会話のセンスも抜群.完璧なるレディーファーストに,食事のマナー.ウインクも格好良くて,同性の私でも惚れ惚れでした.なにより,常に“楽しむ”姿勢に,ボスからも周囲からも絶大な人気を得ていました.国際モテ指数=120.

留学で気づくのが,大和撫子の評価の高さです.服装・マナー・身のこなし・繊細な気遣いなど,確かに世界基準でも突き抜けていると思います.

対照的に,大和男子は欧米のジェントルマンの前に苦戦気味です.私も荒波に揉まれているひとりです.つい先日,私は年輩の女性にドアを開けてもらって,先に中に入ってしまいました…orz.3月に,ある女性研究者を空港へ送迎したときのこと.車の横で直立されてるので,「ロックはかかってないですよ」と伝えました.すると少し困惑された様子で車に乗られました.助手席のドアを開けてもらうのを待っておられたのだと,送迎後に気づきました……orz.

習慣を変えるには,まず気づくことから.見回すとお手本となるような方が必ず周囲にいると思います.そういった方を参考に,国際的ジェントルマンへ成長していきましょう.私も頑張ります.

プロフィール

佐々木敦朗(Atsuo T. Sasaki)

米国オハイオ州立シンシナティ大学・助教授.’95,東京理科大学卒業,’97年,広島大学大学院修士課程修了,2001年,久留米大学にて博士号〔指導教官・吉村昭彦教授〕.’02年,日本学術振興会(JSPS)特別研究員としてカリフォルニア大学サンディエゴ校のRichard Firtel博士の研究室に留学.’05年,大陸横断,JSPS海外特別研究員としてハーバード大学のLewis Cantley博士の研究室へ異動.’12年より現職.GTPエネルギーのがんと疾患における制御について新分野開拓中.家訓は「起こったことはいいことだ」.気付けば,息子18歳,娘は15歳.家族4人のドタバタ留学は続く.to www研究室HP

今井祐記(Yuki Imai)

愛媛大学プロテオサイエンスセンター/大学院医学系研究科/学術支援センター・教授.1999年,大阪市立大学医学部卒業.2005年,大阪市立大学大学院医学研究科修了,医学博士 (指導教官:高岡邦夫教授).整形外科医として10年間の臨床経験の後,’09年,ダナ・ファーバー癌研究所のMyles Brown教授の元で研究に従事.’10年,東京大学分子細胞生物学研究所を経て,’13年より現職.臨床から生まれた運動器疾患についての疑問を少しでも明らかにすることをモチベーションに研究を展開中.to www研究室HP

黒田垂歩(Taruho Kuroda)

バイエル薬品株式会社オープンイノベーションセンター・アライアンスマネージャー/主幹研究員.1999年,北海道大学薬学部卒業,2004年,博士 (薬学) 取得.理化学研究所・基礎科学特別研究員(ユニットリーダー:福田光則先生)を経て,’07年,ダナ・ファーバー癌研究所David Pellman教授の研究室でポスドク研究員(JSPS海外特別フェローおよびHFSP長期フェロー).’13年帰国,三重大学大学院医学系研究科テニュアトラック助教を経て,’14年から現職.ボストン留学中に学んだこと,育んだ交友関係は,アカデミアを離れた今も私の最高の宝物です.

UJA編集部(五十音順)

今井祐記(愛媛大学)/岩渕久美子(ハーバード大学)/川上聡経(ハーバード大学)/黒田垂歩(バイエル薬品株式会社)/小藤香織(シンシナティ大学)/坂本直也(ミシガン大学)/佐々木敦朗(シンシナティ大学)/髙井菜美(UJA)/高濱正吉〔アメリカ国立眼研究所/アメリカ国立衛生研究所(NIH)〕/高濱真実(UJA)/中川 草(東海大学)/西田敬二(神戸大学)/本間耕平(日本医科大学)/谷内江 望(東京大学)

コラム子連れネコ連れエジンバラ留学体験記 Part4

小林純子(北海道大学大学院医学研究科)

娘の言葉の発達と英語

娘は生後7カ月から2歳7カ月までの2年間,平日10時間は英語を話す保育士と子どもに囲まれて過ごしていました.娘の初めての言葉は彼女の大好きな「おっぱい」でしたが(笑),出てくる単語は英語と日本語が半々に混ざっていました.保育園で覚えた英語の歌もよく歌ってくれました.外国の童謡(Nursery rhymesといいます)は知らなかったので,Youtubeで調べたり,Nursery rhymesのCDやDVDを買ったりして勉強しました.日本と共通する童謡もありますが,歌詞やリズムが微妙に違ったりします.日本でよく歌う「あたま・かた・ひざ・ポン」は「Head, Shoulders, Knees &Toes」となり,リズムも違います.よく聞くNursery rhymesには「Itsy-Bitsy Spider」,「Ring-a-Ring-o’ Roses」,「Row Row Row Your Boat」などがあります.一緒に指遊びをしたり,踊ったりと楽しい童謡です.

子育てで使う英単語も知らないものばかりだったので,保育園の先生や英国人の友人が話す単語から覚えました.おむつは「Nappy」,ハイハイは「Crawl」といい,片手タッチは「High five」,両手タッチは「High ten」というなど,論文書きには使わない英単語ばかりで新鮮でした.

帰国当初の娘は私たち両親のことを「Daddy」「Mammy」と呼んでいましたが,日本の保育園に通うようになるとあっという間に娘の話す言葉の中から英語は消えていきました.せっかく覚えた英語がもったいないと英語の絵本を読み聞かせたりしていたのですが,次第に「日本語で読んで」と言うようになりました.子どもにとっては日本語を覚えたい時期で,その時に無理やり英語を覚えさせようとするのはストレスになると知り,親が頑張って英語を日常に取り入れようとするのをやめました.1年ほど経つと,英語の絵本を持ってきても「英語と日本語と両方で読んで」と言うようになり,お風呂につかりながら1から10までを英語で数えたりするようになりました(なんとなく発音がいいように感じるのは親の願望でしょうか!?).娘にとっては記憶に残らないであろうエジンバラ生活も,いつか将来,彼女の人生の糧になればと願うばかりです.

大切なのは“あきらめないこと”

  • エッフェル塔の下でTower のポーズ

娘の妊娠がわかってからの3年間は新しいことばかりでした.今,こうやって振り返ると本当によくやったな,と思います.正直,娘が産まれてから数カ月間は育児が大変で,研究留学自体を断念して,育児留学にしようかと思ったこともありました.それでも,私がエジンバラで育児をしながら研究することを選んだのは,単に「あきらめが悪かった」からだと思います.そして,それを可能にしてくれたのは,生活・仕事全般を支えてくれる夫の存在が大きく,本当に感謝しています.また,日本でもスコットランドでも理解あるSupervisorに恵まれたことも幸運であったと思います.

2年間の留学を終えて帰国するときも,私は夫の戻る仙台ではなく,自分がもといた研究室がある札幌に娘を連れて戻ることを決めました.これも私のまだ自分の研究を続けたいという「あきらめの悪さ」のせいですが,娘には寂しい想いをさせてしまい申し訳なかったです.それでも,いつか あの時あきらめなくてよかったと思えるように,いい研究を続けていけたらと思います.

(おわり)

本連載,待望の単行本化!助成金,生活セットアップ,留学後の進路…書ききれなかったノウハウを大幅追加してパワーアップ

研究留学のすゝめ!

研究留学のすゝめ!
渡航前の準備から留学後のキャリアまで

  • UJA(海外日本人研究者ネットワーク)/編 カガクシャ・ネット/編集協力
  • 2016年12月発行
  • 定価3,500円+税
  • A5判
  • ISBN978-4-7581-2074-6

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