画像のどこをみるべきかがわかる入門書.カンファレンス形式で,今まで知らなかった画像の読み方が楽しくわかります.CT,MRIを中心に読影のツボを大公開!グッと差がつく解剖のポイントも必読です!
本書のもとになったレジデントノート誌およびHPに掲載された連載より,第1回(レジデントノート2010年12月号掲載分)をご覧下さい.
指導医:脳梗塞を疑い単純CTが施行されている(図1,2).所見はどうだろうか?
研修医:臨床症状からは右大脳半球に梗塞がありそうですが….加齢/虚血性変化と考えられる側脳室周囲の低吸収域が認められる以外には,よくわかりません.
若手放射線科医:CTで急性期脳梗塞を診断する場合,いわゆる“early CT sign”の確認が必要になります.以下の所見に注目してみてください.
主に塞栓性の超急性期梗塞で認められ,t-PA(tissue-type plasminogen activator:組織型プラスミノゲン活性化因子)の適応を考えるうえでも重要な所見である.
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研修医:本症例では右側のhyperdense MCA sign(図1), レンズ核の輪郭不明瞭化や島皮質の不明瞭化(図2)などが認められるのですね.あれ?MCAの高吸収部分に関しては,動脈硬化性変化による石灰化を見ている可能性はありませんか?
指導医:鋭い質問だね.確かに石灰化との鑑別が難しいケースもあるので,その点を意識して読影することは重要だね.石灰化では吸収値が血栓よりも高い点,そして(基本的に動脈硬化によるものなので)ある部位だけに限局せずに両側性に広く認められることが多い点,その他の急性期梗塞の画像所見に乏しい点などが鑑別のポイントになるね.そして何よりも臨床症状が大事であることを忘れてはならないね.
若手放射線科医:さて,次の検査はMRIです(図3~6).超急性期梗塞を考慮して,拡散強調画像(diffusion weighted image:DWI)も含めて撮影されていますね.異常はわかりますか?
研修医:右中大脳動脈および前大脳動脈支配領域に一致して,DWIで高信号を呈しています(図3).FLAIR像ではレンズ核や尾状核頭部がわずかに高信号なようにも見えますが(図4),DWIでの高信号に一致するような明らかな信号上昇は認められません.超急性期の脳梗塞を考えます.
指導医:その通り.超急性期ではDWIでのみ異常信号が描出されることが多く,FLAIR像で異常が明らかになるのには,遅い症例では発症後24時間程度経過した急性期以降になるともとされている.それ以外に,何か付け加えることはあるだろうか?
若手放射線科医:CTでのhyperdense MCA signのあった部位にほぼ一致して,T2強調画像でvascular flow void(血流のある部分が無信号に描出されること)の消失を認めます(図5).また,同部はFLAIR像でも高信号を呈しています(図6).これらは血栓を反映した所見と考えられ,FLAIR像での高信号“intra-arterial sign”あるいは“hyperintense MCA sign”と呼ばれることもあります.“hyperdense MCA sign”と“hyperintense MCA sign”とでは基本的には見ているものは同じで言い方が変わっただけですね.
研修医:CTではdensity(濃度),MRIではsignal intensity(信号強度)と表現されるからですね.
指導医:そうだね,そういう言葉の使い分けを意識することはとっても大切だね.early CT sign自体は1980年代の後半に提唱された概念で,当時は急性期脳梗塞をCTで早期診断できるというので脚光を浴びたんだけれど,その後にMRIの拡散強調画像が普及してあまり注目されなくなったという経緯もあるんだね.ところが最近になってrt-PA(recombinant tissue-type plasminogen activator:一般名アルテプラーゼ)に代表されるt-PA製剤が登場し,それによる血栓溶解療法の適応を決めるために再び注目されるようになった.rt-PAの適応は脳梗塞発症3時間以内であると同時に,中大脳動脈領域におけるearly CT signの範囲が1/3以下であることが条件であるともされ(early CT signの1/3 MCAルール),出血の可能性が高い症例には使用しないという考え方だね.またt-PA製剤の適応とは関係なくても,MRIの拡散強調画像がどこの施設でも深夜・休日時間帯に必ず撮像できるわけではないので,CTだけで脳梗塞を早期診断できるという意義は臨床現場では大きいね.超急性期脳梗塞の症例に遭遇した場合は,積極的にearly CT signやhyperdense MCA signを探すようにしようね.
↑5,6ではearly CT signを実際にトレーニングできます.
第2回,第3回もレジデントノートHPで御覧いただけます!
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