画像診断ワンポイントレッスン
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本連載が書籍化しました!(2012年4月2日発行)

NEW 続刊が発行になりました!(2016年2月1日発行)

第2回 髄膜がわかると病気がみえてくる!~症例から学ぶ髄膜とその周辺構造~

症例1 67歳男性.肺癌の脳転移検索目的に頭部MRIが施行された.

カンファレンス

指導医:脳転移検索目的の症例だね.実はほかのスライスで脳実質に転移巣が描出されているのだけど,それ以外に注目してほしいことがあるのでこのスライスを呈示したんだ(図1,2).何か異常に気づいたかな?

研修医:それ以外に注目してほしい…脳実質以外に,ということですか?

指導医:病変を見つけるときの基本の1つとして,左右差に注目することも大事だね.よく比較してみよう.

研修医:あっ! 右前頭葉前面に位置する線状の構造が,左より明らかに目立っています!(→)

若手放射線科医:よく気がつきましたね.それでは,その構造が何かわかりますか?

研修医:普段は脳実質以外をあまり気にしていないためか,よくわかりません.

指導医:それではまずは解剖を復習してみよう.頭部は外側から順に皮膚~皮下組織,骨,髄膜があるのはわかるよね.皮下組織は脂肪の信号を反映してT1強調像,T2強調像,FLAIRのいずれでも高信号を呈する(脂肪抑制を併用しない場合).そしてその内側にあるのが骨,つまり頭蓋骨になりますが,信号パターンはどうなると思うかな?

研修医:骨だから無信号になるんですよね!

図3

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指導医:骨=無信号と覚えている人が多いのだけれど,骨にも緻密骨と海綿骨があったのを覚えているかな.緻密骨,すなわち皮質骨は石灰化成分が主体なので無信号になるのだけれど,海綿骨は間に骨髄を含み成人では一般に脂肪髄の状態にあるため,脂肪信号を反映して皮下組織と同様に高信号構造として認められるんだ(脂肪抑制を併用しない画像の場合).頭蓋骨の場合,図3のごとく外板-板間層-内板の3層構造から成っていて,外板・内板は皮質骨なので無信号,板間層は海綿骨なので骨髄の信号を反映するんだ.

研修医:なるほど.そうすると今回の症例1で右前頭葉前面に厚く見えているのは,頭蓋骨の内側にある構造ですよね.髄膜でしょうか?

若手放射線科医:髄膜(meninges)というのは硬膜(dura mater),くも膜(arachnoid mater),軟膜(pia mater)を総称した名称ですね.最外側に硬膜があり,その直下にくも膜,その下には脳脊髄液が入っているくも膜下腔があり,最内側には脳に密着した軟膜があります(図3を参照).

研修医:あれ? 硬膜下腔もあったような気がしますが….

指導医:硬膜下腔は硬膜とくも膜の間に位置する空隙で,基本的には潜在腔なので,硬膜下水腫/血腫などの病変があったときにその存在が明らかになるんだ.ちなみに,硬膜下水腫とくも膜下腔の拡大は一見紛らわしいのだけれど,硬膜下水腫ではくも膜下腔の静脈が脳表側に圧排されるのに対し,くも膜下腔の拡大ではその内部を静脈が横切って認められることが鑑別点とされているんだ(症例2,図4)2,3).また,内板と硬膜の間にも潜在腔である硬膜外腔があることも覚えておこう.

症例2 2歳男児.髄膜炎治療後のフォローアップMRIが撮影された

研修医:それでは,髄膜はMRIで同定できるのでしょうか?

指導医:髄膜のなかでも,(軟膜やくも膜に比べて)厚い硬膜は非造影MRIでもFLAIR像などで描出されることがある.また,硬膜は血液脳関門をもたないために造影されるので,造影T1強調画像でその存在がより明瞭になるんだ.だから,髄膜病変を疑ったときは,確実に造影検査をオーダーしよう.さて,ここまでの解剖はわかったかな.

図2 拡大図

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研修医:はい.(造影T1強調画像である)図2を外側から順にみると,皮下組織(高信号)→外板(無信号)→板間層(高信号)→内板(無信号)→硬膜(一般には中等度の信号,本例では右側が肥厚し高信号:→)→くも膜下腔(著明な低信号)→灰白質となっているわけですね! つまり,この症例では右前頭部で硬膜の肥厚と造影効果が目立っているのですね(図2拡大図を参照).

指導医:その通り! 本症例では肺癌の既往があり,また,1年前のMRIでは硬膜肥厚が認められなかった点などから,硬膜転移と診断されたんだ.

研修医:なるほど.ところで,髄膜のなかでも硬膜以外が肥厚することはないのですか?

図5

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若手放射線科医:もちろんありますよ.MRIでの髄膜の異常増強効果は,硬膜,硬膜下腔,くも膜が主体の“dura-arachnoid pattern”(DA型)と,もう1つはくも膜下腔,軟膜が主体の“pia-subarachnoid pattern”(PS型)に分けられます(図5).また,両者が混在することもあり,これらは疾患の鑑別上も非常に重要です.

例えば,先程の硬膜転移(症例1)では限局性のDA型の増強効果を呈していますが,感染性髄膜炎などではDA型よりもPS型を呈しやすいとされています.症例3(図6,7)は小児の細菌性髄膜炎の症例ですが,前頭部を主体に脳表に沿うような異常増強効果,すなわちPS型の病変が認められますね(→).

症例3 10カ月,男児.発熱と項部硬直があり,髄液検査で細菌性髄膜炎と診断された

研修医:本当だ.これもうっかりしていると見落としかねないですね.

表

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指導医:そうだね.髄膜はもともと認識しにくい構造であることに加えて,MRI装置や撮像法,脂肪抑制の有無,撮像断面,ウィンドウ幅/レベルなどによって見え方が変わることがさらに評価を難しくしているんだ5).先程の症例1のように左右差で判断するのが有効なこともあるけれど,(特発性低髄液圧症候群に代表されるような)びまん性の硬膜肥厚を呈する疾患などでは,左右差がなくてその厚みで判断するしかない状況も生じうるんだ.硬膜の厚みは正常ではおおむね1mm以下ともいわれているけど5),なかなかクリアカットにいかない部分もあるので普段から髄膜を意識して読影することで自分の病院の画像での正常範囲を理解し,もし異常があった場合は病変の主体となる髄膜(および髄膜腔)はどこなのか,そして広がりは限局性かびまん性かなどに留意していくことが大切だね.ちなみに,髄膜の異常増強パターンや広がりとその原因疾患をまとめるとのようになるよ.

これから頭部のMRI画像を読影するときは,脳実質だけでなく“脳の外”にも着目するように心がけようね.

参考文献

  1. 「グレイ解剖学」(Richard, L. D., et al. 著,塩田浩平 ほか 訳),エルゼビア・ジャパン,pp. 782-786,2007
  2. Haines, D. E., et al.:The "subdural" space:a new look at an outdated concept. Neurosurgery, 32:111-120, 1993
  3. McCluney, K. W., et al.:Subdural hygrome versus atrophy on MR brain scans:"The cortical vein sign". AJNR, 13:1335-1339, 1992
  4. Mrltzer, C. C., et al. : MR imaging of the meninges Ⅰ Normal anatomic features and nonneoplastic disease. Radiology, 201:297-308, 1996
  5. 「新版 所見からせまる脳MRI」(土屋一洋 ほか 編著),秀潤社,pp. 119-129,2008
  6. 「脳脊髄のMRI 第2版」(細谷貴亮 ほか 編),メディカル・サイエンス・インターナショナル,pp. 299-311,2009
  7. Osborn, A. G.:Brain tumors and tumor like processes.「Diagnostic neuroradiology」, pp. 517-523, Mosby, St. Louis, 1994
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プロフィール

堀田 昌利(Masatoshi Hotta)
日本赤十字社医療センター 放射線科 後期研修医
初期研修中には全く画像がわからず,放射線科の先生に何度も助けられたのを覚えています.逆の立場になった今,少しでも頼られる放射線科医になれるよう日々頑張っています.
扇 和之(Kazuyuki Ohgi)
日本赤十字社医療センター 放射線科
早いもので放射線科医になって27年めに入りました.毎日,研修医の先生と一緒にワンポイントレッスンなどをやりながら,楽しい時間を過ごしています.

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