「救急外来ドリル」掲載・2026年3月4日公開
高齢者で多い症候の1つに“脱力”があげられます.歩けない,動けない,力が入らない,かったるいなどさまざまな主訴で来院することがありますが,どのようにアプローチしたらよいのか困ってしまった経験がある人も多いでしょう.麻痺・しびれも同様ですが,危険なサインとともに,具体的な鑑別疾患を頭に入れ対応することが必要となります.
突然発症の病歴,左右差のある身体所見を認める場合には要注意です.脱力の鑑別は多岐にわたります(Weakness category:表)が,突然発症であれば,脳卒中などの頭蓋内疾患,心筋梗塞など急を要する病態が含まれ,左右差を認める場合にもまた,一過性脳虚血発作(TIA)を含む脳卒中が鑑別の上位にあがります.“突然発症”,“左右差”,この2点は,まず確認するようにしましょう.
どちらにも該当しない場合にはどのように鑑別を進めるべきでしょうか.確定診断を救急外来でつけるのが難しいことはありますが,ここでもやはり,見逃し厳禁な疾患を拾いあげなければなりません.救急外来では,① 心筋梗塞/心不全,② 消化管出血や腹腔内出血などの出血性病変,③ 敗血症,菌血症,④ 高・低カリウム血症,高カルシウム血症,高マグネシウム血症に代表される電解質異常,⑤ 薬剤性 を鑑別にあげ対応するようにしています.
高齢者,特に女性では,心筋梗塞であっても痛みの訴えがはっきりしないことがあります.吐血や意識消失を認めれば出血の関与を誰もが考えますが,どちらもなければ考えないかもしれません.また,発熱を認めないと感染の関与を考えづらいかもしれませんが,qSOFA(呼吸数,意識状態,収縮期血圧)や悪寒戦慄の有無に注目し,感染の関与を見逃さないことが大切です.さまざまな電解質異常で脱力症状を認めますが,Kの異常は急を要するため特に意識しましょう.“くすりもりすく”であり薬剤の影響は常に忘れてはいけません.
引用文献
1)Anderson RS Jr & Hallen SA:Generalized weakness in the geriatric emergency department patient:an approach to initial management. Clin Geriatr Med, 29:91-100, 2013(PMID:23177602)