「救急外来ドリル」掲載・2026年4月1日公開

突然の呼吸困難,X線を撮影しても特記すべき異常所見なし,心電図では洞性頻脈…となると,誰もが肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism:PTE)を考えるでしょう.救急外来でも,突然発症の呼吸困難症例で片側の下肢に深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)を示唆する腫脹や疼痛があれば見逃すことはありません.しかし,意外とPTEは見逃しがちです.皆さんも「え? あの患者さんPTEだったの?」という経験があるのではないでしょうか.呼吸困難以外にも,失神や発熱を主訴に来院した患者さんがPTEであることも珍しくありません.過換気症候群だと思い帰宅させた患者さんがPTEだったという事例は毎年のように経験します.

PTEを診断,除外するために必要な検査は,“らしい症例”では造影CT,“らしくない症例”ではD-dimerです.また,Wells rule()は有名ですね1).しかし,そもそもPTEを疑わなければらしさを見積もることもできません.いつ疑うのか,私は以下の3項目に注目しています.

① ほかに説明がつかない頻呼吸を認める場合
② ほかに説明がつかない頻脈を認める場合
③ ほかに説明がつかないSpO2低下を認める場合

さらに,これらを安静時のみの評価ではなく,普段と同様のADLで評価するのです2)

よく経験する見逃し例は,呼吸困難を認めて来院したものの,一時的な酸素投与で診察時には症状が軽快,または消失してしまったというものです.肺炎や心不全,慢性閉塞性肺疾患などもそうですが,労作時(酸素需要が増えたとき)に症状が再燃する場合には,当然治療介入が必要です.

救急外来で安静時にバイタルサインが安定していたとしても,普段ADLが自立している人であれば,付き添いで歩行し,頻呼吸やSpO2の低下を認めないかを確認するようにしましょう.これで何度救われたことか…患者さんも私も….

引用文献

1)Douma RA, et al:Performance of 4 clinical decision rules in the diagnostic management of acute pulmonary embolism:a prospective cohort study. Annals of Internal Medicine, 154:709-718, 2011(PMID:21646554)

2)「救急外来 ただいま診断中!」(坂本 壮/著),中外医学社,2015


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