画像診断ワンポイントレッスン
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本連載が書籍化しました!(2012年4月2日発行)

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本コーナーでは,研修医も知っておきたい画像所見やそのポイントについて,放射線科の指導医,若手放射線科医,初期研修医の3人によるカンファレンス形式で実践的に解説します.コーヒー片手に気軽に読んでみてください.今回は超急性期脳梗塞で認められるearly CT signについて取り上げます.

第1回 超急性期脳梗塞を見逃すな!~知っておきたいearly CT sign~

症例 85歳女性.数時間前に突然の左片麻痺,構音障害が出現し搬入された

カンファレンス

指導医:脳梗塞を疑い単純CTが施行されている(図1,2).所見はどうだろうか?

研修医:臨床症状からは右大脳半球に梗塞がありそうですが….加齢/虚血性変化と考えられる側脳室周囲の低吸収域が認められる以外には,よくわかりません.

若手放射線科医:CTで急性期脳梗塞を診断する場合,いわゆる“early CT sign”の確認が必要になります.以下の所見に注目してみてください.

ワンポイント early CT sign

主に塞栓性の超急性期梗塞で認められ,t-PA(tissue-type plasminogen activator:組織型プラスミノゲン活性化因子)の適応を考えるうえでも重要な所見である.

hyperdense MCA sign
発症直後より出現.中大脳動脈(middle cerebral artery:MCA)内に血栓を反映した高吸収構造を認め,同部より末梢血管も血栓化を反映して高吸収になる.
レンズ核の輪郭不明瞭化
発症後1~2時間で出現.レンズ核は穿通枝灌流領域で虚血に対して脆弱なため,より早期から輪郭が不明瞭化する.
皮質-白質境界・島皮質の不明瞭化
発症後2~3時間で出現.皮質の吸収値が低下し,白質との境界が不明瞭になる.島皮質はinsular ribbonとも呼ばれ,外包・前障・最外包の部位に相当し,他部位よりも頭蓋骨のアーチファクトが少ないため観察が容易である.
脳溝の消失・脳実質の低信号化
発症後3時間以降に出現することが多い.浮腫性変化を反映した所見である.
図3,4,5,6

クリックして拡大

研修医:本症例では右側のhyperdense MCA sign(図1), レンズ核の輪郭不明瞭化や島皮質の不明瞭化(図2)などが認められるのですね.あれ?MCAの高吸収部分に関しては,動脈硬化性変化による石灰化を見ている可能性はありませんか?

指導医:鋭い質問だね.確かに石灰化との鑑別が難しいケースもあるので,その点を意識して読影することは重要だね.石灰化では吸収値が血栓よりも高い点,そして(基本的に動脈硬化によるものなので)ある部位だけに限局せずに両側性に広く認められることが多い点,その他の急性期梗塞の画像所見に乏しい点などが鑑別のポイントになるね.そして何よりも臨床症状が大事であることを忘れてはならないね.

若手放射線科医:さて,次の検査はMRIです(図3~6).超急性期梗塞を考慮して,拡散強調画像(diffusion weighted image:DWI)も含めて撮影されていますね.異常はわかりますか?

研修医:右中大脳動脈および前大脳動脈支配領域に一致して,DWIで高信号を呈しています(図3).FLAIR像ではレンズ核や尾状核頭部がわずかに高信号なようにも見えますが(図4),DWIでの高信号に一致するような明らかな信号上昇は認められません.超急性期の脳梗塞を考えます.

指導医:その通り.超急性期ではDWIでのみ異常信号が描出されることが多く,FLAIR像で異常が明らかになるのには,遅い症例では発症後24時間程度経過した急性期以降になるともとされている.それ以外に,何か付け加えることはあるだろうか?

若手放射線科医:CTでのhyperdense MCA signのあった部位にほぼ一致して,T2強調画像でvascular flow void(血流のある部分が無信号に描出されること)の消失を認めます(図5).また,同部はFLAIR像でも高信号を呈しています(図6).これらは血栓を反映した所見と考えられ,FLAIR像での高信号“intra-arterial sign”あるいは“hyperintense MCA sign”と呼ばれることもあります.“hyperdense MCA sign”と“hyperintense MCA sign”とでは基本的には見ているものは同じで言い方が変わっただけですね.

研修医:CTではdensity(濃度),MRIではsignal intensity(信号強度)と表現されるからですね.

指導医:そうだね,そういう言葉の使い分けを意識することはとっても大切だね.early CT sign自体は1980年代の後半に提唱された概念で,当時は急性期脳梗塞をCTで早期診断できるというので脚光を浴びたんだけれど,その後にMRIの拡散強調画像が普及してあまり注目されなくなったという経緯もあるんだね.ところが最近になってrt-PA(recombinant tissue-type plasminogen activator:一般名アルテプラーゼ)に代表されるt-PA製剤が登場し,それによる血栓溶解療法の適応を決めるために再び注目されるようになった.rt-PAの適応は脳梗塞発症3時間以内であると同時に,中大脳動脈領域におけるearly CT signの範囲が1/3以下であることが条件であるともされ(early CT signの1/3 MCAルール),出血の可能性が高い症例には使用しないという考え方だね.またt-PA製剤の適応とは関係なくても,MRIの拡散強調画像がどこの施設でも深夜・休日時間帯に必ず撮像できるわけではないので,CTだけで脳梗塞を早期診断できるという意義は臨床現場では大きいね.超急性期脳梗塞の症例に遭遇した場合は,積極的にearly CT signやhyperdense MCA signを探すようにしようね.

参考文献

  1. 百島祐貴:急性期脳卒中の画像診断.Prog med, 27:269-272,2007
  2. 井田正博 ほか:脳虚血超急性期の早期検出.脳と循環,11(3):245-251,2006
  3. 平野照之:急性期脳梗塞の頭部単純CT・拡散強調画像.分子脳血管病,7(1):78-85,2008
  4. 平野照之 ほか:t-PA投与の判断と実際 Early CT signのみかたと効果の予測因子について.神経治療,24(1):25-32,2007

参考WEBサイト:さらに勉強したい人のために

  1. MELT JAPAN/Early CT sign 判読トレーニング
  2. ASIST JAPAN/CT&DWI初期虚血変化読影トレーニング

↑5,6ではearly CT signを実際にトレーニングできます.

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扇 和之/編 堀田昌利,土井下怜/著

プロフィール

堀田 昌利(Masatoshi Hotta)
日本赤十字社医療センター 放射線科 後期研修医
初期研修中には全く画像がわからず,放射線科の先生に何度も助けられたのを覚えています.逆の立場になった今,少しでも頼られる放射線科医になれるよう日々頑張っています.
扇 和之(Kazuyuki Ohgi)
日本赤十字社医療センター 放射線科
早いもので放射線科医になって27年めに入りました.毎日,研修医の先生と一緒にワンポイントレッスンなどをやりながら,楽しい時間を過ごしています.

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