診療所実習・研修をのぞいてみよう(企画:PCFMネット)

第3回 PCFMネットと出会って

  • 清田実穂(川崎医療生活協同組合 あさお診療所)

夏期セミナーでの出会い

PCFMネットと出会って

私がPCFMネット(プライマリケア・家庭医療の見学実習・研修を受け入れる診療所医師のネットワーク)のことをはじめて知ったのは,家庭医療学研究会(当時)主催の家庭医療学夏期セミナーの場でした.このセミナーは,研究会が日本プライマリ・ケア連合学会となった現在も行われており,今年の8月に第26回のセミナーが開催されていましたので,ご存じの方もいらっしゃるかと思います.私はこのセミナーではじめて家庭医に出会い,将来家庭医になりたいと思うようになりました.しかし,大学に戻れば家庭医療について教えてくれる人はおらず,身近に家庭医療を行っている医師がいるわけでもなく,将来像が具体化できずに悩んでいました.その頃にPCFMネットを知り,このネットワークを活用して実習に行くことを計画しました.

実習での貴重な経験

5~6年生にかけて,PCFMネットを使って5ケ所の診療所に1回1日~1週間の日程で実習に行きました.このネットワークには日本中(海外も)の診療所が参加していますので,自宅から通える範囲,自分に縁のある地域,行ってみたい場所などを考慮して実習先を決めることができます.また,さまざまな診療所をまわることで,地域の特性,所長のこだわり,実際の臨床などを見ることができます.私の場合,外来見学(成人も小児も),訪問診療見学,カンファランスへの参加,病院回診(入院中の診療所患者の回診)同行,口腔ケア実践の見学,看護師業務の見学,事務陪席などなど,いろいろな内容が含まれていました.特に,医師以外の職種についての実習は,病院研修ではなかなかできるものではなく,とても貴重な経験でした.その後も研修や,現在の臨床にもこのときの実習内容が活きていると感じます.

皆さんへのメッセージ

実習に際して後悔していることが2つあります.1つ目は,もっと多くの診療所に実習に行けばよかったということです.学生のときは,学生なりに多忙な日々を過ごしていると思っていましたが,やはり社会人よりは時間があります.この時間を活用しもっとたくさんの診療所に行き,もっといろいろな人と出会っておけばよかったと思います.2つ目は,実習の内容をきちんと記録に残していなかったということです.当時の私は,振り返りやログづけの重要性を理解しておらず,実習内容を文章や写真などで記録に残していませんでした.また,実習中に生じた驚きや疑問などのさまざまな感情・考えを,それらが新鮮なうちに書き留めておけばよかったと思います.どんなに強い感情でも,時が経てば薄れてきたり,あやふやなものになってしまったりするからです.

私は現在,川崎市内の診療所で家庭医をしています.私の診療所ももちろんPCFMネットに参加していますのでぜひ,実習にいらしてください.そして,実習の際は学んだことや感じたことをぜひ記録に残してください.必ず皆さんの糧になります.