地域の病院に休日診療のお手伝いに行っていたときに「爪がおかしいから診てほしい」という若い女性が来院されました.この方はネイルサロンを経営されており,自分もいつも華やかなネイルをつけていたそうです.ある時,痛くもなんともないけれど,ネイルを剥がしたら爪が緑色になっていて驚いて来院されました.私もはじめて診たのですが,調べてみるとGreen Nail症候群という感染症であることがわかりました1,2).ネイルなど爪に対する物理的刺激が原因であることが多いようですが,爪が傷ついたり,真菌感染などによって爪の状態が悪くなったりしたときに緑膿菌が感染する場合が多いようです.緑膿菌がピオシアニンやピオベルジンなどの色素を産生するため,患部が緑色にみえるといわれています.爪の表面に感染する場合と爪と爪床の間に感染する場合があり,まず物理的刺激をとり除き,そのうえで抗菌薬(真菌感染も併発している場合は抗真菌薬を併用)の外用薬を使用することが多いそうですが,キノロンなどの広域抗菌薬の使用には議論があるようです.
爪の症状は全身疾患の症状の1つである場合があり,かつて画像診断が発達していないころ,医師たちは体表に現れる症状から疾病を見つけだそうと努力したことがうかがわれます.有名な爪の症状にTerry’s Nailというのがあり,これは肝硬変患者によくみられる爪が白くなる現象です3).日常の診療で私は患者さんの爪をまじまじと診ることはあまりなく,爪には多くの情報があることを改めて認識しました.ちなみに,うちの秘書さんは,ものすごくきれいなネイルをしています.キーボードをたたくのに邪魔になりそうですが,全然問題ないそうです.