実験医学 2011年4月号 Vol.29 No.6

細胞成長・増殖の司令塔 mTORシグナル

オートファジー・老化の分子機構から,幹細胞・代謝制御まで

  • 猪木 健/企画
  • 2011年03月18日発行
  • B5判
  • 131ページ
  • ISBN 978-4-7581-0070-0
  • 定価:2,000円+税
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

TORが酵母から発見されて20年,その研究は衰退するどころか,ますます活性化されているように思える.ラパマイシンをPubMed検索に入れると14,000に近い論文が現れる.この数を他の阻害剤を用いた論文数と単純に比較するのは難しいが,2011年における発表論文をみても約5論文/日で,総論文数は日ましに増え続けており,この分野がいかに多くの研究者の興味をもつところであることは言うに及ばない.ではなぜ多くの研究者がTORタンパク質に興味をもっているのだろうか? その一番の理由は,やはりラパマイシンが予想をもしなかった魅力的な効果(延命,抗癌,免疫抑制等)を発揮しているためと思われる.本特集では特に最近の哺乳類TOR(mTOR)タンパク質の働きと,その調節に焦点を当て,この概論では私的な観点からmTOR研究の問題点および醍醐味を紹介したい.

栄養状態を検知し,適切な細胞成長と増殖を司るmTORシグナル経路.2種のmTOR複合体それぞれの分子機構から,オートファジー,抗癌や幹細胞維持,寿命への関わりまで,最先端のトピックをお届けします.

目次

特集

細胞成長・増殖の司令塔 mTORシグナル
オートファジー・老化の分子機構から,幹細胞・代謝制御まで
企画/猪木 健
概論─まだまだ広がるmTOR 研究【猪木 健】
TORが酵母から発見されて20年,その研究は衰退するどころか,ますます活性化されているように思える.ラパマイシンをPubMed検索に入れると14,000に近い論文が現れる.この数を他の阻害剤を用いた論文数と単純に比較するのは難しいが,2011年における発表論文をみても約5論文/日で,総論文数は日ましに増え続けており,この分野がいかに多くの研究者の興味をもつところであることは言うに及ばない.ではなぜ多くの研究者がTORタンパク質に興味をもっているのだろうか? その一番の理由は,やはりラパマイシンが予想をもしなかった魅力的な効果(延命,抗癌,免疫抑制等)を発揮しているためと思われる.本特集では特に最近の哺乳類TOR(mTOR)タンパク質の働きと,その調節に焦点を当て,この概論では私的な観点からmTOR研究の問題点および醍醐味を紹介したい.
特別寄稿─TORの発見者,Dr. Hallのメッセージ The History and Perspectives of TOR Research【Michael N. Hall】
TOR/mTOR研究の世界の第一人者が今後のTOR研究の展開をどのように展望されているのか? また日本におけるこの分野の研究をどのように評価しているのかが知りたく,各論の序文として,TORの発見者でありTOR複合体の単離を報告したDr. Hallに一筆をお願いした.Dr. Hallは,酵母のみならずマウスを用いた研究で,TOR/mTORの生理および病理的役割を活発に報告されている.また多くの興味深い学会を企画されているので,ぜひ参加していただきたい(http://www.torandmore.org/).この序文では,TOR/mTOR研究の歴史,そして重要性,また今後の方向性が端的に述べられている.
アミノ酸センシングシステムとしてのmTOR複合体1の機序【原 賢太/中嶋昭雄/吉川 潮】
mTOR複合体1(mTORC1)はmTOR,Raptorなどからなるシグナル複合体であり,RaptorはmTORのリン酸化シグナルをmTORC1の基質タンパク質へ伝える必須の足場となっている.RhebはmTORをGTP依存的に直接活性化する役割を担っており,細胞増殖因子はRhebに対するGAP活性を有するTSC1/2を抑制することでGTP型(活性型)Rhebを増加させる一方,アミノ酸はRhebとmTORC1の直接の会合を促進しmTORC1の活性化を誘導する.Rag複合体はmTORC1へ直接結合し,Rhebの存在する膜分画へアミノ酸依存的にmTORC1を運搬しRhebとの会合を誘導するというモデルが提唱されている.
開かれるmTOR複合体2研究【池上恒雄】
mTOR複合体2(mTOR complex 2:mTORC2)はRictor(mAVO3),mLST8(GβL)を含むラパマイシン不応性のmTOR複合体として同定されたが,その後,Sin1,Protor(PRR5),Deptor等の構成分子が次々と発見された.また,機能面において,mTORC2がAKTの疎水性モチーフに存在するSer473のキナーゼであることの発見は,mTOR研究において重要であるのみならず,癌や代謝性疾患等で注目されるPI3K/AKTシグナル伝達経路の研究におけるブレイクスルーの1つといえる.本稿ではmTORC2の構成分子,標的タンパク質,生理的役割および疾患との関連について,最新の知見を交えて解説する.
飢餓におけるmTORの役割【久万亜紀子/水島 昇】
mTORは富栄養条件下で活性化され,細胞成長・代謝・タンパク質合成などさまざまな細胞機能を制御する.一方,飢餓条件において不活性化されることも重要である.細胞内分解システムであるオートファジーは,栄養条件下mTORによって負に制御されており,飢餓時にmTORの不活性化に伴い活性化される.mTORによるオートファジーの制御機構は長らく不明であったが,近年,急速に解析が進んでいる.また最近,オートファジーによって形成されたオートリソソームがリソソームへ再生する過程にも,mTORが重要な役割を果たすという新しい発見があった.本稿では,オートファジー誘導とリソソーム生合成におけるmTORの役割について,最近の知見を紹介したい.
老化とTOR/タンパク質代謝の関係【成田昌子/成田匡志】
細胞老化はストレス反応として,さまざまな病態との関係が指摘されている.なかでも,癌や血管病変など加齢に関係した病態との関係が注目されている.さらに,自然な加齢との因果関係も示されている.mTORシグナルは,個体の加齢および,加齢に関連した病気を考えるうえで,重要な位置を占めるが,mTORと細胞老化との関係に関する研究はまだはじまったばかりである.ここでは,mTORおよび,それによって負に調節されるオートファジーによるタンパク質代謝と細胞老化との関係を考える.また,その延長線において,個体老化との関係についても概説する.
mTORシグナルによる幹細胞制御【中田大介】
mTORシグナルは細胞増殖を司り,個体の発生段階で必須な働きをする一方で,成体においては各種器官不全症や癌において活性の亢進がみられる.個体の発生,および成体の各種器官の恒常性は幹細胞の自己複製能と分化能により保たれており,幹細胞の異常が癌化につながることも知られている.つまりmTORの異常活性により引き起こされるさまざまな生理現象に,幹細胞機能が深くかかわっている.本稿では,最近の知見により明らかになりつつあるmTORによる幹細胞制御について考察したい.
mTORシグナルと糖脂質代謝異常【迫田秀之/浅野知一郎】
糖脂質代謝異常は,肥満やインスリン作用の不足などの要因によって発症する.Raptorを含むmTORC1(mTOR複合体)の活性化は,膵β細胞量の増加とともにインスリン分泌を促進する.さらにmTORC1は,SREBP-1,PPARγやC/EBPαなどを介して脂質代謝も調整するほか,下流のp70S6Kによるタンパク質合成促進に加え,IRS-1をセリンリン酸化することでインスリン抵抗性を惹起する.一方,Rictorを含むmTORC2(mTOR複合体)は,Aktをリン酸化により活性化し,インスリン作用の誘導に関与している.したがって,2種類のmTOR複合体は糖脂質代謝の調節に全く異なる役割を果たしている.

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