バイオメディカルの展望を訊く―キーパーソンインタビュー

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難治性疾患治療を目指して

~医療ニーズと学術研究の接点 (5/5ページ)

【対談】中村良和,加藤茂明

特別対談「難治性疾患治療を目指して~医療ニーズと学術研究の接点」(実験医学2009年1月号より

人材交流と情報の共有が重要

加藤 私は,いろんな海外の製薬企業の研究所で招待講演に行ったりしていますが,彼らに会うと結構大学での長い研究生活経験者が多いことに驚かされます.産学連携では,お互いの風土,文化のギャップが壁になりますので,産業界も大学側ももう少し柔軟に人材交流をするべきだと思っています.
それから,このライフサイエンス分野では海外で経験のある人を連れてこないとどうしようもないんじゃないかなと思うんです.例えば,サイエンティフィックなことでいえば,『Nature』『Science』に日本人もたくさん論文を出すようになりましたが,エディターになった日本人は1人もいないと思います.主要なジャーナルをみると,例えば『Lancet』のように圧倒的にその臨床の成果が巨大な影響力を現す雑誌では,エディターに力がありますよね.基礎の分野でも,どこかでそれを打破しないといけないと思います.薬でも打破できているし,基礎研究でもノーベル賞級の仕事も出ていますが,全体を俯瞰できる人材がまだ日本人のなかで育っていません.

対談風景 中村良和先生(左),加藤茂明先生(右)

中村 グローバルな人材ですね.先生がおっしゃった人材の交流は非常に重要だと思います.基礎の先生方はさまざまな医薬品化の提案をされるんですけれど,その先どのくらいのプロセスを踏んではじめて,世の中に出るかをご存じでないことが多くあります.実験の段階ではよくとも,「どのように製剤化するか」とか,「quality controlをどうするか」など,たくさんのプロセスが存在するのです.
ですから,加藤先生がおっしゃった人材交流ができれば,大学の方が企業に入り,例えば「これだけGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)は大変なんだ」ということを理解されて大学に戻っていかれると,本当の意味で価値のある連携ができると思います.

加藤 日本では,専門家が集まって,専門的なことばっかりやっていますが,横のつながりが希薄です.それがないとライフサイエンスは進まない分野だと思っています.

中村 難病の患者さんとお付き合いしていると,みなさん本当につらい思いされているのを肌で感じます.少しでも情報を共有できるような機会をつくっていただきたいと思います.本日は,加藤先生とお話しする機会を得て,難病のことを本当に考えてくださっている先生がいらっしゃることを知り,私は非常に光栄に思っています.

編集部 本日は貴重なお話をいただき,ありがとうございました.

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