[Opinion―研究の現場から]

本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第45回 プレゼンテーションを楽しみ,楽しまれるために

「実験医学2014年3月号掲載」

プレゼンテーションとは詰まるところ情報伝達手段であるため,聴衆が内容を理解できない状態で終わることは,聴衆だけでなく発表者にとっても時間の無駄で終わってしまいます.特に研究分野が異なると,発表者は言いたいことを伝えにくく,聴衆側も理解に苦しむときが多いのではないかと思います.発表者と聴衆側の歩み寄りが足りないといえばそれまでですが,最近,専門にかかわらず聴衆が聴きたくなるようなプレゼンテーションとは,特に発表者によるところが大きいのではないかと考えるようになりました.実際,植物やバクテリアなど自分の専門外の話に聴き入ったこともあり,その発表を参考にしてきました.今回はまだまだ駆け出しの学生である私の考える,あるべきプレゼンテーションの姿についてお話します.私の感じる魅力的なプレゼンテーションは,以下の3つの特徴を備えていることに気付きました.

①聴衆を引き込む世界観がある:楽しい・おもしろい映画は2時間という長い時間でもその映画の独自の世界観に没入して見ることができます.後で内容を思い出すこともでき,気になる場所はもう一度見直してしまうことさえあるかもしれません.企業の新製品紹介などでは,わかりすい絵や独特のフレーズを用いることで聴衆を強く引きつけて,製品を印象付けています.よいプレゼンテーションはおもしろい映画やコマーシャルによく似ています.

②おもしろさを伝えることを第一に考える:研究の発表の場合でも,企画を発表する場合でも,必ずそこにはおもしろいポイントがあるはずです.発表時間をすべて使って何をするのか.発表内容をすべて理解してもらえることが最も望ましいことであると思いますが,それはとても困難なことです.そこで 「全聴衆におもしろがってもらう」 ということを目標にするのはどうでしょうか.発表が完全には理解できなかった方にとっても,その内容に興味をもつきっかけになるならば,その発表時間は全員にとって意味のある時間になると思いますし,もちろん,知識・理解のある方にはすべて理解してもらえることだと思います.

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③発表者自身が最も楽しんでいる:発表内容の楽しさ・おもしろさを最も理解しているのは発表者自身のはずです.発表者本人がそう感じていないものを,聴いているだけの聴衆が楽しみ・理解することは難しいと思います.また,発表者が楽しめていると,その話し方も自然と明るくなり,ひいては聴衆が聴きやすい話し方になるのではないでしょうか.楽しそうに,おもしろそうに話している発表者の周りには,自然と人が集まっているように思います.

聴衆を楽しませ,自身の世界に引き込むという意味では,発表で用いるスライドを作成するときは「見せるショーを作っている」,実際のプレゼンテーションの場では発表者は聴衆に対して「ショーを見せている」,といえるのではないでしょうか.普段私たちは研究者であるかもしれませんが,発表のためのスライドや準備を行っている間は,プロのプロデューサーであり,発表の場に立っている間は,聴衆の目と耳を引き付け,聴衆を自身の世界に巻き込むエンターテイナーであるべきだと感じています.

プレゼンテーションは十人十色で,研究者であれば誰しも自身の経験から,「どのように話したらよいか,どのようにスライドを作るようにしたらよいか」という問いに対して自分なりの答えをもっていると思います.その点,私はまだ経験も浅く,話し方,スライドの見せ方などの技術は日々勉強している身ですが,今は常にこれらの点を心がけ発表に取り組むようにしてします.また,これらを心がけつつ,さらに他の方の発表を観聴きして,今はまだ見つけられていないプレゼンテーションの心得を探しています.

井口大壽(東京理科大学理工学研究科応用生物科学専攻修士課程/生理学会若手の会)

※実験医学2014年3月号より転載