[Opinion―研究の現場から]

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本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第71回 学術交流を変革する,新しいカタチ

「実験医学2016年5月号掲載」

「学会に行っても,おもしろくないな」─ 最近,よく聞こえてくる声ですが,学会を運営する事務局にとっては,さぞ耳にしたくないフレーズだと思います.筆者も学会運営に携わる機会がありますが,いかに魅力的な学術集会を企画するかは頭を悩ませるところです.実際に,若い研究者の学術集会への参加者数や,会員数が年々減少していることは,多くの学会が直面している問題でしょう.もちろん,学会側も目を背けているわけではありません.各学会が,若手賞の設立,キャリアパス講座や就職支援,美術・音楽イベント,ときには婚活支援など,さまざまな手を使って若手会員の獲得に取り組んでいます.しかしながら,学会の本質はサイエンスを追究することであり,そこに魅力を感じさせることが大事ではないかと,筆者は勝手に思っているわけです.

とはいえ大層な理想論を騒ぎ立てても,「じゃあ,どうするの?」と言われると意気消沈してしまうのが世の常です.そこで,自分達が行動しなくては何も変わらないと,高尚たる熱意をもって立ち上げたのが,わが「血管生物若手研究会」であります.学会が(サイエンスとして)おもしろくないのはなぜか?その理由を筆者は以下のように考えました.

  1. 発表者が偏っている(毎年同じ先生方が同じような話をしている印象).
  2. 質疑応答で突っ込んだ議論ができない.
  3. ポスターセッションは2組に分けての一斉スタート.しかも谷間の時間帯に組込まれるなど,扱いが雑.
  4. その内容,論文でもう読みました.

つまり,毎年違う顔ぶれでおもしろい未発表データをもっている演者を揃え,質疑応答の時間をしっかりとって,ポスター発表も夕方やランチョンの合間に入れずに個別発表をしっかりやるプログラムをつくるということです.このようなプログラムを実現するのは,大きな学会では実質不可能でしょう.でも,小さい研究会だと,理想に近い形ができるのではないでしょうか.筆者の経験では,蓼科で毎年開催されている「がん若手研究者ワークショップ」や,とある新学術領域の班会議は前述の問題がなく,参加してよかったと心から思える会でした.そのような会を自分たちの研究分野にもつくろう,そして若い研究者達のステップアップにつなげようと,一念発起したわけです.幸いなことに,筆者の所属する「血管生物医学会」は共感してくれる同世代の研究者に恵まれており,2015年に「血管生物若手研究会」の立ち上げへと至りました.

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「ライフハックで雑用上等」

いざ会を立ち上げようとすると,理想と現実のジレンマにぶつかります.最も大きな問題は,そう,お金です.会場費や名札などの準備費,印刷費など何をするにも費用がかかりますが,このご時世ではスポンサー企業はなかなか見つかりません.残す道は,血管生物医学会を親学会として,支援してもらうことですが,そうなると活動内容が制限されるのではと危惧していました.しかし,意外にも理事会からは歓迎され,自由にやらせていただけることになりました.結果,親学会の肩書きが付くことで参加者の増加にもつながったと思います.また,若手研究会の優秀演者を親学会のシンポジストへと推薦する制度も導入し,よい連携を構築できつつあります.

しかしながら,問題はお金だけではありません.去る3月4〜5日には第2回目の研究会を開催しましたが,すでに第一原則の「毎年違う顔ぶれ」を達成することが難しくなりつつあります.(筆者個人の発表としては「おもしろい未発表データ」も綻びつつある…).それでも,困難を歓迎し,自分たちで開催することで見えてきた,「理想と現実」をしっかりと受け止めることで,「おもしろい」研究会を継続できればと思っています.

木戸屋浩康(大阪大学微生物病研究所/血管生物若手研究会)

※実験医学2016年5月号より転載

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本記事の掲載号

実験医学 2016年5月号 Vol.34 No.8
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