プロフェッショナル根性論

第2回 自分のキャパシティーを見極める

自分の世界で一番になる(2008年2月号)のOnline Supplement Material

今回は,本誌連載 第2回「自分の世界で一番になる」でご紹介いただいた,キャリア成長のうえでの障害であり,一方でうまく利用することによって自分の希少さを高めることのできる"Dip"について,その見きわめ方の詳細をご紹介いただきます.

教師が子どもに与える最悪のアドバイス

セス・ゴーディンの「the dip(本誌文献1より)」によれば,両親や教師が子どもに与えるアドバイスが成人期になっても効力をもつなら,ビジネスキャリアの観点からみて最も不適切なものの1つが「一度はじめたことは絶対にやめてはならない(Never quit).必ず最後までやり通しなさい」である.ビジネスキャリアの観点から正しくいい直せば「長期的に見て大きな可能性のある仕事やプロジェクト(Dipの向こうに急峻な登り坂のあるキャリアやプロジェクト)であるなら,短期的な苦痛に耐えかねてやめてはいけない」となるだろう.

本誌コラムで書いたように,quitしなくてすむ最良の方法は,自分にDipを乗り越えられるキャパシティーがあるかどうかを,何事もはじめる前に十分に見極めることである(例えば,「有機化学が得意かどうかは,米国の医学部での基礎医学の勉強というDipを乗り越えられるかどうかを予測する簡単なテストである」という例をセスはあげている).

しかし,一般的に何事も計画通りには行かないものなので,計画したにもかかわらず,Dipの途中でquitしたくなったなら,本当にやめることを決定する前に次の3つのことを確かめようとセスは提唱する.

dip
  1. パニックになっていないか
    • 冷静に判断することが最も大切
  2. アプローチは正しいか
    • 自分の力だけでは突き抜けることのできない壁にぶつかっているのなら,なにかレベレッジの方法はないか考えよう.
  3. パラメーターを変えてみる
    • Dipにいる(努力しているのに,全く進歩がない)と感じるのは不適切なパラメーターで自分の進歩を計っているためでは? 全く別のパラメーターを試してみよう.

著者プロフィール

島岡 要(Motomu Shimaoka)
大阪大学卒業後10年余り麻酔・集中治療部医師として敗血症の治療に従事.Harvard大学への留学を期に,非常に迷った末に臨床医より基礎研究者に転身.Mid-life Crisisと厄年の影響をうけて,Harvard Extension Schoolで研究者のキャリアパスについて学ぶ.現在はPIとしてNIHよりグラントを得て独立したラボを運営する.専門は細胞接着と炎症.
ブログ:to www「ハーバード大学医学部留学・独立日記」A Roadmap to Professional Scientist
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加筆・修正をしてますます洗練された内容にパワーアップ!タイトルも新しく『やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術』に生まれ変わりました!
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