がん,肥満,糖尿病,高血圧,うつ病…人はなぜ病気になるのか?進化に刻まれた分子記憶から病気のメカニズムに迫る「進化医学」.診断,治療法の確立にも欠かせない,病気の新しい考え方をわかりやすく解説!
現代の多くの人々が、病気に悩み苦しんでいる。たとえそこまではいかないまでも、治療で通院していたり、あるいはその病気の予防はできないものかと思案したりして自分なりの運動を日課としている人々はさらに多い。たとえば、がん・肥満・糖尿病・高血圧・うつ病・痛風などといった病気は、それなりの年齢になってくると、特に気になる病気である。
私自身も、毎年誕生月に近い時期に人間ドックを受けるようにしている。そして、その結果の数値を見ながら、肥満や老化から来る必然的な「未病」のような状況に落胆するとともに、優しそうな主治医の先生から厳しい意見をいただき、予防のための指導を受ける。その病院からの帰り道、ふと「人はなぜ病気になるのか?」と、ため息交じりに空を見上げることがあったりするのは、私だけではないのではなかろうか。
私たちのそのような素朴な質問に、世界的に有名な医学者である著者は、ありふれた医学の知識から答えようとはしない。その答えは進化のなかにあると確信する著者は、科学者として病気の本質的理解を求めようとする姿勢なのか、病気の歴史とメカニズムを深く理解しようとしてさまざまな考察を行ってきた。本書では、病気のメカニズムとして、その進化に刻まれた分子の記憶が著者によって大胆に披歴される。そして著者のこのような独創的で新しい視点が、病気の本質的理解を深めるだけでなく、疾患に対する新たな対策をも予見させるものであることを、読者は確信するのである。
これは、進化の本でもある。しかも、非常に優れた進化の本である。著者は私が心から尊敬する世界的な医学者であるが、医学者が書いたとは思えないほど、本書では進化についての基礎知識や最新の知見が正しくかつわかりやすく説明されている。卓越した著者の理解力と伝達力には、読んでいて感服する。さらに一方、医学者らしく、感染症や生活習慣病、寿命や加齢に伴う疾患、そして脳や心に関連した精神疾患までも、最新のゲノム的知見からみた発症メカニズムやその環境との関連が、明晰な解説と洞察力によって説明されるのである。まさに本書は「進化医学」という新しい分野の正当な幕開けを宣言する名著といえる本である。
つまり本書は、進化の本と言いながらも、進化学を学ぶものにとっても病気を例として進化の新しい視点が豊富にちりばめてある一方、もちろん医学に関係する人たちにとっては、疾患に関する最新のゲノム研究を知るうえで非常に有用な本である。
しかしながら、最もこの本を読んでほしい人たちは、大学生や大学院生、ならびに医学を学ぼうと志す若い人たちである。また、「人はなぜ病気になるのか?」といった素朴な疑問に、進化という新しい視点で真摯にその解を与えているという意味においては、専門とは全く関係ない一般の人々にも、ぜひ読んでほしい本でもある。
約10年以上も前に、私が日本の医学界を代表するような著者に懇願して、日本遺伝学会の大会の特別講演をお願いしたとき、進化医学のもつ重要性を魅力的にわかりやすく話をしていただき、私を含む多くの学会員が著者の講演を心躍らせて拝聴したことを昨日のように覚えている。その著者のライフワークとなる進化医学の研究がこのようなわかりやすい解説書として結実したことは、進化を学ぶものとしても、深い敬意を表するとともに、同慶の至りとして心から嬉しく思う次第である。
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