「救急外来ドリル」掲載・2026年4月28日公開
女性が腹痛など消化器症状を主訴に救急外来を受診したら妊娠の可能性を考え対応する,ということは押さえておく必要があります.それと同時に,虫垂炎も常に意識しておきましょう.虫垂炎は非常に頻度の高い疾患で,医学部の同級生のなかに必ずと言っていいほど経験者がいるでしょう.また,高齢者の既往歴を確認すると,あの方もこの方も,といった感じで虫垂炎の手術歴があるものです.
虫垂炎は胃腸炎と誤診されることが多いですが,これを防ぐためには虫垂炎の症状の出現順を覚えておくとよいでしょう〔胃腸炎の満たすべき3つの条件は【その19】食べてすぐ吐いたら中毒だ!参照〕.虫垂炎は一般的に表1の通り心窩部痛からはじまり,その後嘔気・嘔吐などを認め,典型的な痛みの部位である右下腹部痛を認めます.そして,発熱や白血球上昇を認めるのは,その後です.嘔気・嘔吐と腹痛を伴っているから胃腸炎,右下腹部に痛みがないから虫垂炎ではない,発熱や白血球上昇が認められないから虫垂炎ではない,とはいえないのです.心窩部痛からはじまり,その後嘔吐している場合には要注意なのです.非常に頻度の高い疾患がゆえに,例外はいくらでもありますが,まずは典型的な症状,順番を意識するだけで見逃しは減るものです.
虫垂炎らしさを見積もるスコアとして,Alvarado score(表2)が有名です.これを見積もり“らしさ”を評価することは重要(低リスク:0~3点,中リスク:4~6点,高リスク:7~10点)なのですが,これはあくまで来院時点でのらしさであって,低リスクだから虫垂炎にはならないということではありません2).リスクが低く帰宅可能と判断した場合には,患者さん,家族への説明を十分に行い,現在の病状,今後の経過について理解してもらうことは必須です.一方的に話をして帰宅させるのではなく,相手の理解度を意識した対応をとりましょう.医療従事者が説明した内容を「患者自身の言葉」で説明してもらう(Teach-Back),ポイントを記載する,説明文の用紙を作成するなども有用です.
引用文献
1) Alvarado A:A practical score for the early diagnosis of acute appendicitis. Ann Emerg Med, 15:557-564, 1986(PMID:3963537)
2) McKay R & Shepherd J:The use of the clinical scoring system by Alvarado in the decision to perform computed tomography for acute appendicitis in the ED. Am J Emerg Med, 25:489-493, 2007(PMID:17543650)