こんなにも面白い医学の世界 からだのトリビア教えます

第17回 3秒ルールは本当か?

食べ物を床に落としたとき,「3秒以内(または5秒以内)なら大丈夫!」といって食べた経験はありませんか? アメリカでも“Five seconds rule!”と叫びながら,地面に落ちた食べ物を食べた友人がいて,これは世界共通の認識なのだと感動した記憶があります.しかし,本当に床や地面に落ちた食べ物を3秒や5秒以内に拾えば,衛生的に問題ないのでしょうか?

この疑問を解決するために,大真面目に実験をした論文がアメリカから出ています1).彼らの実験を簡単に説明しますと,まず,ネズミチフス菌を,カーペット,木,タイルの表面にばらまいておきます.これらの上に,ボローニャソーセージ,またはパンを置き,5秒,30秒,60秒後に拾い上げ,どれだけの細菌がこれらの食べ物に移動するか,を検討しています.

トリビアイメージ

まず,カーペット,木,タイルのどの環境であっても,ネズミチフス菌は十分感染力を保ったままで1カ月生存できることがわかりました.そして,5秒,30秒,60秒のいずれでもほぼ同じ菌数が食べ物に移動し,接触時間が短いからといって安全ではないことが証明されています.カーペットの上は,木やタイルと比較すると少しましでした.カーペットは接触面積が少ないのが原因かもしれません.それでも菌は十分な感染力をもって移動するというデータが出ています.

感覚的には,ソーセージは菌がつきやすく危険だけど,パンなら落としても,さっと拾えば大丈夫そうな感じがします.ですが,実はソーセージでもパンでも,時間に関係なく菌は移動するという衝撃的な結果が出ました.

彼らの実験は,きわめて現実的に疑問を解決するようにデザインされていて,大変興味深いものです.皆さんのうちで将来,大学院に進んで医学博士のための研究をしようと思っている人もいるでしょう.臨床や日常のふとした疑問を解決する,それも大切な医学研究なのです.

文献

  1. Dawson P, et al:Residence time and food contact time effects on transfer of Salmonella Typhimurium from tile, wood and carpet:testing the five-second rule. J Appl Microbiol, 102(4):945-953, 2007

著者

  • 中尾篤典(岡山大学医学部 救急医学)
ドリルの反復練習で心電図判読の着眼点を知り,診断力を高める!

レジデントノート増刊 Vol.21 No.2
心電図診断ドリル
波形のここに注目!

森田 宏/編
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