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染色体外DNA(ecDNA)が誘導するがんの進化と多様性

Extrachromosomal DNA(ecDNA): A new driver of cancer evolution and heterogeneity
芳野聖子
Seiko Yoshino:名古屋大学大学院医学系研究科分子腫瘍学
10.18958/7783-00001-0006114-00

近年,がんの新たな病態メカニズムとして「染色体外DNA(extrachromosomal DNA:ecDNA)」が注目されている.ecDNAは,さまざまながん遺伝子を巻き込んで増幅した,染色体とは独立して存在する環状DNAで,核内でecDNAの凝集体(ecDNAハブ)を形成し,がん遺伝子の強力な転写活性化を引き起こす.染色体とは異なり細胞分裂時に非対称に分配されることから,直接的に腫瘍内の遺伝的不均一性を駆動し,がんの進化や治療抵抗性に寄与する.さらに,形成・複製,ecDNA間の再編成,染色体への再統合といったecDNA特有の動態を通じて,ecDNA自身も顕著な配列の不均一性を呈する.本稿では,ecDNAの構造・機能,臨床的意義,ダイナミクス,治療標的としての可能性について,最新の知見をもとに概説する.

染色体外DNA(ecDNA),がん遺伝子,エンハンサー,がんの進化,治療抵抗性

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