実験医学 2015年9月号 Vol.33 No.14

最新 がん免疫療法

抗PD-1抗体,CAR-T細胞療法から,Neoantigenを標的としたがん制御機構まで

  • 玉田耕治/企画
  • 2015年08月20日発行
  • B5判
  • 135ページ
  • ISBN 978-4-7581-0143-1
  • 2,200(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

これまでのがん免疫療法は臨床効果が不十分であり,がん治療法としては補助的な位置づけであった.しかしながら,近年開発された免疫チェックポイント阻害療法や遺伝子改変T細胞療法は極めて強力な抗腫瘍効果を有し,標準療法では治癒できない進行がん症例に対して優れた治療効果を示すことが明らかとなってきた.このように最近のがん免疫療法の進展によって,がんの克服に向けた潮流が生じようとしている.本特集では,その潮流を読み解くためのカギとなる最新トピックを取り上げて解説する.

抗PD-1抗体の有効性により,がん治療法の新たな基軸としての期待がますます高まる,がん免疫療法.がん/免疫研究者・医師・製薬メーカーが今,最も注目する革新的な療法の最新研究と世界の動向をご紹介します!

目次

特集

最新 がん免疫療法
抗PD-1抗体,CAR-T細胞療法から,Neoantigenを標的としたがん制御機構まで
企画/玉田耕治
概論̶ がん免疫療法の進展によるがん克服に向けた【玉田耕治】
これまでのがん免疫療法は臨床効果が不十分であり,がん治療法としては補助的な位置づけであった.しかしながら,近年開発された免疫チェックポイント阻害療法や遺伝子改変T細胞療法は極めて強力な抗腫瘍効果を有し,標準療法では治癒できない進行がん症例に対して優れた治療効果を示すことが明らかとなってきた.このように最近のがん免疫療法の進展によって,がんの克服に向けた潮流が生じようとしている.本特集では,その潮流を読み解くためのカギとなる最新トピックを取り上げて解説する.
免疫チェックポイントの基礎とがん免疫療法への開発【濵西潤三/万代昌紀/小西郁生】
近年の分子生物学の発展により,がん微小環境における 「がん免疫逃避機構」 の存在が明らかとなり,さらにその中心的経路の1つとして,T細胞性免疫の機能抑制にかかわる免疫チェックポイントB7/CTLA4経路およびPD-1/PD-L1経路とそれらの阻害薬が注目されている.特にPD-1/PD-L1経路の阻害薬は,世界中の製薬会社や研究施設によって数多くの固形腫瘍や血液腫瘍を対象にのべ数万人にのぼる臨床試験が行われており,さらに臨床試験患者の検体を用いた基礎的研究から臨床効果を予測するような,いわゆるリバーストランスレーショナルリサーチも活発となっている.そこで本稿では,免疫チェックポイント阻害薬の基礎的背景から国内外での臨床試験の動向と今後の展望について概説する.
遺伝子改変T 細胞を利用したがん免疫療法【池田裕明】
がん免疫療法は,その潜在能力に対する大きな期待にもかかわらず,長らく臨床の現場でがん患者に役立つ治療を提供できてこなかった.しかし,近年の免疫チェックポイント阻害療法や遺伝子改変T細胞を利用したがん免疫療法は臨床試験において顕著な効果を示し,腫瘍を一定に制御するのみならず,がん患者を治癒させうる可能性さえ期待されている.一方,その顕著な臨床効果は副作用の出現可能性と表裏一体であることも明らかになりつつあり,今後はより有効で,かつ安全性の高い治療戦略の構築が必須になる.本稿では遺伝子改変T細胞を利用したがん免疫療法の現状を概観し,今後克服すべき問題の抽出と,われわれの研究室の取り組みの紹介を行う.
腫瘍特異的変異抗原を標的としたがん免疫療法【中面哲也】
Rosenberg SAらは,メラノーマの腫瘍浸潤リンパ球を体外で大量培養し,化学療法やX線全身照射による体内のリンパ球除去後に移入するがん治療法で高い奏効率を示した.また,近年抗CTLA-4抗体や抗PD-1抗体などの免疫調整因子阻害剤も高い有効性が示されている。メラノーマでは,紫外線による多種類の遺伝子変異が生じており,それによりHLAに提示される免疫原性の高い変異ペプチドを認識するT細胞が多数存在する。それらが上記治療法の有効性に起因していることがわかってきた.腫瘍特異的変異抗原を標的とした個別化がんワクチン療法の臨床試験も登場し,腫瘍特異的変異抗原はneoantigenとよばれ今大きな注目を集めている.
がん免疫アジュバントの開発と応用【黒田悦史/Burcu Temizoz/大畑敬一/小檜山康司/石井 健】
がんに対する免疫療法として,免疫アジュバント療法が注目されている.これまでさまざまなアジュバントががん免疫療法に応用されてきたが,特にCpGやSTINGリガンドのような核酸アジュバントはがん微小環境における免疫寛容を打破するとともに,強い抗腫瘍免疫を誘導することで注目されている.さらに最近では,CpGの改良・改善が試みられており,デリバリーシステムを意識したリポソーム化,ナノ粒子化,さらには他の核酸アジュバントとの組合わせなども成果を上げてきている.本稿では主に核酸アジュバントに注目し,がん免疫療法における新規アジュバントの研究開発について概説したい.
抗がん剤・分子標的薬との複合免疫療法の新展開【原田 守】
がん免疫研究の進展により,がん免疫療法が積極的に実施されてきた.しかし,ある程度の効果は認められたものの治療効果は不十分であった.その後,さまざまな免疫抑制機序の解明や免疫チェックポイント阻害抗体の出現により,がん免疫療法はがん治療の表舞台に立とうとしている.そして,がん免疫療法の治療効果をさらに高めるためには,すでに臨床で使用されている他のがん治療薬と併用することが有用と思われる.本稿では,抗がん剤・分子標的薬が免疫応答に及ぼす効果や影響を説明し,それらを併用した複合免疫療法について概説する.
がん免疫療法の臨床開発ガイダンス【影山愼一】
めざましく進展するがん免疫療法について,臨床開発のための日本版ガイダンスの作成が行われている.がんワクチン,エフェクター細胞療法,免疫抑制阻害療法が主な免疫療法であるが,これらは腫瘍免疫応答の理解を基盤に開発されてきたものであり,その特性を考慮して臨床開発を進めることが開発成功の確率を高めることになるだろう.これまでに作成したガイダンス 「早期臨床試験の考え方」 (案) を公開している.今後,後期臨床試験や非臨床試験に関するガイダンス作成も望まれるところである.
《世界最前線レポート》ASCO レポート【吉村 清】
2015年5月〜6月にイリノイ州シカゴ市で行われた米国臨床腫瘍学会の報告を行った.近年の免疫チェックポイント阻害剤の開発に引き続き,Chimeric antigen receptor (CAR)-T療法が有効性を示しつつあることでがん免疫療法は今大きな盛り上がりを見せている.本稿ではここに焦点を当て,臨床試験の動向,開発の現況についてレポートした.

特別記事

《2015年 Japan Prize 記念インタビュー》遺伝子で病気は治せるか?
Father of Gene Therapyの見た「夢」は40年の時を経て「現実」の医療へ【インタビュー Theodore Friedmann,Alain Fischer】

Update Review

遺伝子発現揺らぎの定量的理解をめざして【御手洗菜美子】

トピックス

カレントトピックス
喉の渇きを制御する神経回路【岡 勇輝】
胎生期の脳には成体神経幹細胞の元となる細胞(起源細胞)が存在する【古館昌平/原田雄仁/後藤由季子】
乳酸脱水素酵素はてんかんの代謝的制御を可能にする創薬標的分子である【井上 剛/佐田 渚】
オキシトシンと視線を介したポジティブ・ループによるヒトとイヌの絆形成【永澤美保/菊水健史】
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連載

クローズアップ実験法
簡単RNA 蛍光in situ ハイブリダイゼーション実験【川口哲哉/廣瀬哲郎/中川真一】
テツヤ、留学生活はどうだい。
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