読者の皆さんは,「海外留学」について考えたことはあるだろうか? われわれUJA(United Japanese researchers Around the world)では,留学やキャリアパスの情報共有を目的に,日々活動している.去る9月24日,第91回日本生化学会大会では「留学のすゝめ2018」をUJAとしては初のシンポジウム企画として開催した.本稿ではその模様を紹介したい.
シンポジウムの前半では,海外留学後に研究員,大学教員,民間企業,米国ベンチャー企業に着任,あるいはラボを主宰するに至った方々に,留学後の多彩なキャリアパスについて紹介いただいた.まず三嶋雄太さん(京都大学iPS細胞研究所)に,留学経験が帰国後のキャリアパスにどうプラスに働くかを,科研費獲得と共同研究の経験を交えて語っていただいた.坂本直也さん(広島大学)には,日米の病理医の違いや,ミシガン金曜会立ち上げの経緯,今でも続いている共同研究を紹介していただいた.黒田垂歩さん(バイエル薬品株式会社)からは,米国での研究者としてのキャリアが現在の製薬会社での仕事にどうかかわっているか,そしてボストンのR&Dの「エコシステム」を日本でどうつくるかについて語っていただいた.清水佐紀さん(Maverick Therapeutics)には,研究者から米国で就職する経緯とその実際について,ざっくばらんな経験談をお話ししてもらった.最後に北郷明成さん(UCLA)に,米国での研究の波乗りについて,グラント獲得の大切さ,ポスドク時代におけるラボ運営能力の必要性について話していただいた.概して,海外生活に当然ある苦労のなかにも「やってみれば,なんとかなる」というポジティブなメッセージが共通しているのが印象的だった.
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