News & Hot Paper Digest
UJAだより

海外におけるSNS・Webサービスを用いた情報交換スキル―Global Information Sharing on Social Networking Websites

UJA 星居孝之(千葉大学)/森岡和仁(UCSF)

界の学術情報をいち早く得るためのスマートなスキルを身につけることも研究留学の醍醐味の一つである.今回は留学経験者に世界で使われているSNS・Webサービスの使用実態について調査した.その結果とともに,海外にいる日本人研究者の実例を交えながら各サービスの便利な機能や使い方を紹介する.

SNS・Webサービスに関する使用実態を把握するにあたり,海外日本人研究者ネットワーク(UJA)が有するコミュニティ基盤を活用してアンケート調査を実施した.100名以上の留学生や留学経験者からの回答の結果,利用率(複数選択)および推奨率(利用サービスのうち一番おすすめのものを選択)ともに高かったものはFacebookだけであった(図4参照).使用経験のある方であれば頷ける結果と察するが,人脈作りや情報収集に有用なサービスであることが改めて示された〔Web版UJAアンケート調査(https://uja-info.org/)参照〕.とにかくユーザーが多いため,名刺代わりにアカウント間でつながりネットワークの足場として利用される局面が多く,電話やチャット機能も備えているため手軽な情報共有手段として認知されている.Facebook発祥の地ボストンでは日本人コミュニティ内の活発な異分野交流に活用され,帰国後もつながり続ける手段として確立されている.UCSF日本人会では日本国領事館の緊急連絡網としても利用されている.学術の局面では,多くの科学雑誌や学会が公式アカウントをもっているため,フォローすることによって最新の論文情報が入手できるなど情報収集源としても有用である.最近では個人情報漏洩がニュースになり少し不安は残るが,まだまだ留学生活には欠かせないコミュニケーションツールである.

調査結果で利用率が限定されるも推奨率が高かったLinkedinとResearchGateは,領域に特化したツールとして認知されている.Linkedinはスキルなどを掲載して自己アピールできるだけでなく,逆に必要とする人材を探索してアプローチすることも可能である.一方,ResearchGateは研究者に特化しており,登録者の論文情報や引用頻度を示すH-indexなどの研究者情報を管理してくれる他,入手困難な原著論文の共有を著者本人へリクエストするだけでなく,直接質問することも可能である.同じ領域の研究者向けにQ&Aコーナーの設置ができ,アカデミックネットワーク構築の足がかりにもなりうる.ともに研究者のキャリアアップを後押しするネットワーキングツールと言える.

図4

クリックして拡大

情報のリアルタイム性についてはTwitterが長けている.最近では各種科学雑誌の最新論文公開の宣伝や,学会開催中の公式な告知手段としても活用されている.著名な研究者が開設していることも少なくないため,普段では聞くことができない私的なつぶやきを発見したり,チャットできる可能性も有している.個人の情報拡散力には限界があるため,UJAでは希望者に代わって情報発信にも務めている(https://twitter.com/uja_info).研究業界での用途も確立されつつある迅速かつシンプルなツールである.

近年では,Web情報の閲覧回数やSNS上の影響度などをもとにリアルタイムな学術論文の社会的注目度を測る指標として「Altmetrics」が提唱されており,被引用数では測れない論文の価値を評価する手段の一つとして認知されつつある.SNSの原則は情報収集と発信の双方向であることより,今後は研究成果について科学的価値を示すだけでなく,各種サービスを駆使して社会へ与える影響についても配慮していく必要があることを示唆している.

SlackやZoom,Skype,Evernoteなど用途を限定して機能をより特化させたSNSに分類されないWebサービスも数多く存在する.対象を制限することによってリアルタイム性を高めたSlackやZoomは複数人での同時情報共有を実現しており,Skypeは調査結果でも高い利用率を示している.逆にリアルタイム性よりも記録や拡張性を重視したEvernoteは,電子実験ノートとしても活用されている.いずれも無料の機能は限定的であり,メインで使用するためには結果的に有料の機能を要することになると思うが,用途に合致する場合には唯一無二の有効な手段となりうる.

調査結果を総括すると,留学経験のある研究者はおおむねSNS・Webサービスを活用していたが,依存を懸念する意見もみられた.ツールに使われないスキルを身につけ,効率のよいスタイルを確立する必要性があると推察する.百聞は一見に如かずということでまずは柔軟にいろいろ試していただき,取捨選択して自らの研究生活へ少しずつ導入していくことをお薦めする.

現在UJAでは,研究留学の実態を明らかにすべく,2019年12月31日までWeb上でアンケートを実施しています.対象は,留学経験者の方,留学中の方,将来的に留学を希望する方,留学すべきか悩んでいる方,などです.広く皆様の声を集めたいと思いますので,後述URLもしくはQRコードよりアクセスし,ぜひアンケートにお答え下さい.

https://forms.gle/7PPiN1CS2fC7DZkYA

2019年11月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2019年11月号 Vol.37 No.18
再定義されるタンパク質の常識
古典的なセントラルドグマの刷新と未開拓のタンパク質の世界

田口英樹/企画

新刊・近刊  一覧

iPS細胞のいま
生理学・生化学につながる ていねいな化学
シングルセルゲノミクス
完全版 ゲノム編集実験スタンダード
RNA-Seqデータ解析 WETラボのための鉄板レシピ
撃ち落とされたエイズの巨星
がん免疫の効果を左右する 腫瘍血管と免疫環境
再定義されるタンパク質の常識
脳の半分を占める グリア細胞

人材・セミナー  一覧

実験医学 電子バックナンバー発売中
羊土社の電子書籍
プライマリケアと救急を中心とした総合誌 レジデントノート
Gノート