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脳は病を覚えている? 島皮質のニューロンは末梢の炎症状態を記憶し再現する

理化学研究所 生命機能科学研究センター 内田俊太郎,宮道和成

になるとテレビでスギ花粉が舞う映像が流れる.花粉症に悩む人はこうした映像だけで鼻がむず痒くなるのではないだろうか.「病は気から」と言われ,精神状態や感覚入力に応じて体調が変化することは経験的にも知られており,近年では中枢神経が免疫動態を制御することが明らかになっている.冒頭の例は1975年にラットを用いた実験で提唱された「条件付け免疫反応」という現象の一種と考えられている.この実験では,ラットに免疫抑制剤を投与すると同時に,免疫には影響せず味覚嫌悪のみを誘導するサッカリンを飲用させると,後日再びサッカリン単剤を飲用させるだけで抗体産生能が低下することが報告された.このことから脳内には,経験を手がかりとして免疫状態を記憶するシステムが存在すると考えられてきた.しかし,その詳細な記憶・表出機構はこれまで明らかになっていなかった.今回,テクニオン-イスラエル工科大学のRoll教授らのグループは,大脳の島皮質に,腸管内の免疫反応を記憶するニューロン群が存在することを明らかにした(Koren T, et al:Cell, 184:5902-5915.e17, 2021).

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DOI:10.18958/6991-00004-0000077-00

2022年3月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2022年3月号 Vol.40 No.4
RNAワクチンの先の基礎研究
核酸と生体防御のメカニズムを解き明かす

石井 健/企画
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