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エストロゲン受容体は,RNA結合タンパク質として乳がんの進行と薬剤耐性を誘導する

埼玉医科大学医学部 ゲノム基礎医学 黒川理樹

ストロゲン受容体α(ERα)は,乳がんを誘導する主要なドライバー遺伝子であり,エストロゲン依存性のDNA結合性転写因子として研究されてきた.今回,ERαが新規のRNA結合タンパク質(RBP)であり,このRNA結合が乳がんの進行と薬剤耐性を誘導することが示された(Xu Y, et al:Cell, 184:5215-5229.e17, 2021).転写因子としてのERαは核内で働くが,細胞質にも局在する.Xuらは,細胞質でのERα機能を知るために,ヒト乳がん由来ERα陽性MCF7細胞(以下,MCF7細胞)の細胞質画分でERαと結合するタンパク質群を質量分析で探索した.この結果,細胞質のERαは多くのRNA結合タンパク質(RBP)と結合しており,ERα自体がRBPであることが示唆された.実際,オリゴdTアガロースでMCF7細胞のRNA画分を濃縮すると,ERαが検出された.さらに,MCF7細胞中のERαとRNAを紫外線照射でクロスリンクさせERα抗体で沈降させるクロスリンキング免疫沈降法(CLIP法)を用いて,MCF7細胞のERαがRNAと直接結合することを示した.

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DOI:10.18958/6991-00004-0000078-00

2022年3月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2022年3月号 Vol.40 No.4
RNAワクチンの先の基礎研究
核酸と生体防御のメカニズムを解き明かす

石井 健/企画
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