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翻訳をハイジャックせよ ―バリンの行き先はミトコンドリア

金沢大学がん進展制御研究所 河野 晋

ん細胞の増殖には,アクチンフィラメントやヒストンなどの大量の構造タンパク質が必要である.その一方で,これらのビルディングブロックの合成の傍ら,がん細胞に必須のオンコジーンの翻訳を効率よく行う必要がある.翻訳の効率を上げるには,テーマパークのファストパスさながらに,優先してオンコジーンのmRNA翻訳を開始することや,アトラクションの回転率を上げるようにアミノ酸の伸長速度を早くするパターンが考えられる.前者の例では,T細胞急性リンパ性白血病(T-ALL)においてMYCやNOTCH1などのmRNAは翻訳開始因子eIF4Aを介して優先的に翻訳されることが知られている(Wolfe AL, et al:Nature, 513:65-70, 2014).また,アミノ酸コドンに対応するtRNAは細胞内存在量に偏りがあり,mRNAに含まれるコドンに対応するtRNA量が高いほどmRNAを翻訳する際の伸長速度は速くなり,結果として合成されるタンパク質も多くなる.がん細胞ではtRNA発現パターンが,HIF1αなどのがん細胞の増殖に有利なタンパク質のmRNAに含まれるコドンに対応するパターンに再構成される(Rapino F, et al:Nature, 558:605-609, 2018).このように,がん細胞ではダイナミックなtRNAのリプログラミングが起きているが,その波及効果の全貌は明らかではない.

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DOI:10.18958/6987-00004-0000103-00

2022年4月号掲載

本記事の掲載号

実験医学 2022年4月号 Vol.40 No.6
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小笠原 理/企画
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