[Opinion―研究の現場から]

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本コーナーでは,実験医学連載「Opinion」からの掲載文をご紹介します.研究者をとりまく環境や社会的な責任が変容しつつある現在,若手研究者が直面するキャリア形成の問題や情報発信のあり方について,現在の研究現場に関わる人々からの生の声をお届けします.(編集部)

第80回 研究の現場でCGを使うには

「実験医学2017年2月号掲載」

私は,発生生物学は視覚に訴える学問だと思っている.刻々と過ぎて行く時間のなかで,個体や器官があるべき形へと粛々と変化していく様は生命力に溢れ,荘厳ですらある.これをいかにして伝えればいいのだろうか? 発生生物学を15年ほどやっていても,自分の研究している対象や思い描いているアイデアを正確に相手に伝えることにいつも苦労する.分野を問わず,同じ経験をした方も多いのではないだろうか? 記述やスキームでは伝わりきらない.動画でありのままを撮影することが一番良いのだが,それも叶わなかった場合にどうするか.私は,CGアニメーションを使ってみるのも手だと思っている.ここでは,CGアニメーションを使ってみたい,興味があると思っている読者に最初の一歩となるような情報を提供できたら幸いと思い,執筆したしだいだ.

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CGアニメーションを取得する方法は,主に①既存のものを使う.②制作を依頼する.③自分でつくる,の3つだ.①で都合よく目的のアニメーションが見つかればよいが,そう言う幸運は滅多になく,事実上,②か③の二択だ.②の場合,これはCG制作を請け負っている会社に依頼することになる.「サイエンスアニメーション」や「医療CG」の語句で検索すれば,いくつか制作会社がヒットするだろう.依頼に際して,こちらが準備しておいた方がよいものは,とりあえず絵コンテ(イラストの表からなるアニメーションの設計図)とサンプルの写真(3Dモデリングを必要とする場合)だ.絵コンテをこちらで用意した方がCG制作作業はスムーズに進む.大まかな流れを説明できれば十分なので,絵はヘタでも全く問題ない.3Dモデリングは写真をもとにして作成するので,サンプルの正面,左右,上下,後方から見た画像を用意しておくとよい.また高解像度(2,048×2,048 px程度)の画像で撮影しておくと,テクスチャ(3Dモデルの表面に貼付ける画像)としても使えるので,仕上がりはよりリアルになる.価格帯は1分ほどのCGアニメーションで30〜50万円といったところだろう.高いとお思いかもしれないが,これでもひと昔前に比べて,ずいぶんと単価は下がったのだ.

③の場合,アニメーション作成用に3DCGソフト,アニメーションの編集や色調の調整にAdobe社 After Effectsを使えば自作できる.有償の3DCGソフトとしては,MAYA,3dsMax,CINEMA4Dなどどれか1つあればいい.いずれも3Dモデリングからアニメーションの作成までをAll-in-Oneでできる.大抵の場合,アカデミック割引や無償バージョンがある.無償ソフトではBlender.これもアニメーションの作成までをAll-in-Oneでできる上,流体のシミュレーションもできる.学術系のCGアニメーションを自作する環境は,ここ数年で格段によくなった.上記したソフトならYouTubeにチュートリアルが豊富にアップされているし,手間のかかる3Dモデリングも以前ほど必要ではなくなった.モデル済みデータはフリーで取得できる場合もあるし,購入サイトもあるので(http://www.turbosquid.comなど),人体の主要な組織やオルガネラ,また頻繁に用いられる実験動物程度なら$20〜50程度で手に入れられる.またタンパク質分子の3DポリゴンデータをPDB(http://www.rcsb.org/pdb/home/home.do)からダウンロードして,3DCGソフト上でアニメーションを付ければ,簡単な分子間相互作用のアニメーションを2〜3日程度で完成させることができる.

もちろん,自作の敷居はまだまだ高い.そのうえで,思い通りのCGアニメーションを自作できたときには,代えがたい喜びがある.実験医学誌でも「研究者用に特化したCGアニメーションのつくり方」なんていうテーマで執筆させてもらえる機会があれば…と虎視眈々と狙っている.

参考:https://youtu.be/IOuuMmvzqQI(実験医学2016年2月号 Vol.34 No.3 Notch the Movie,筆者が作成したCGアニメーション)

太田 将(University of Utah)

※実験医学2017年2月号より転載

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