1979年に,腫瘍ウイルスSV40で形質転換した細胞に高発現する約53 kDのタンパク質が発見され,ひっそりとデビューを飾った.後に「ゲノムの守護神」と称され,癌研究のスターとして君臨する癌抑制遺伝子産物p53である.当初は,癌細胞で高発現していることから癌遺伝子として考えられていた.しかしながら,その後,多数の癌において変異・欠失が明らかとなり,癌抑制遺伝子の代表として,実に多くの研究者たちの関心を集めるようになったのである.ほぼ同時期に,p53が細胞ストレスで誘導され,転写因子として機能することが報告され,細胞周期停止作用やアポトーシス誘導能などが次々と見出され,これらが腫瘍抑制機能の主体であると考えられていた.ところが,さまざまな生理作用をもつ下流遺伝子が次々に発見され,実は,p53は想像以上に多彩な生理機能をもつことがわかった.一方で,構造解析や活性調節機構の研究から,リン酸化やアセチル化などの化学修飾を受けたり,ユビキチン—プロテアソーム系で分解調節を受けることが示され,複雑な細胞内シグナルネットワークにより,量的・質的に厳密にコントロールされていることが次第に明らかになってきた.驚くことに,線虫やショウジョウバエにもp53と相同性をもつ分子が存在しており,最近では,解糖系や活性酸素調節,ミトコンドリアでの呼吸・エネルギー代謝,オートファジー,iPS制御など新たな細胞生理機能や,心血管系の制御や内分泌代謝調節など病理学的な役割がトップジャーナルに報告されるようになり,癌研究のみならず,あらゆる生命科学分野のキーワードに登場するようになってきたといっても過言ではない.「p53ワールド」—そのエルドラドの真実の姿を求めて,世界中の研究者たちは,今もなお旅を続けているのである.
発見から30年を経て,いっそう注目を集めるp53.オートファジーやmiRNA発現などHOTな生命現象への関与から,iPS細胞樹立,代謝・老化シグナル経路の制御まで,近年明かされた新機能をご紹介!
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