脂質生物学から，天然物化学・創薬へ

私は2012年に東京大学大学院医学系研究科を64歳で定年退職した．その後，幸運に恵まれ，国立国際医療研究センター研究所において脂質研究を継続する機会を得た．さらに10年後の現在では，公益財団法人微生物化学研究会微生物化学研究所の研究所長として，新たに天然物化学と創薬に挑戦している．これまでの道のりにはいくつもの岐路があり，迷いもあった．しかし，「若い研究者を育てる」「ご縁に恵まれたところが自分の居場所」という一貫した信念が，自身の進むべき道を示してくれた．振り返ると，研究を続ける機会を得られたのは，単なる幸運だけではなく，多くの方々の支援と環境のおかげである．