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概論:RAS:undruggableからdruggableへ

RAS: from undruggable to druggable
10.18958/8015-00001-0006640-00
衣斐寛倫
Hiromichi Ebi:愛知県がんセンター研究所がん標的治療トランスレーショナルリサーチ分野/愛知県がんセンター病院ゲノム医療センター/名古屋大学大学院医学系研究科先端がん標的治療学講座

RASは,最も初期に発見されたがん遺伝子の1つである.guanosine triphosphate(GTP)との結合が低濃度から生じることや,タンパク質表面が平滑であることから創薬が困難とされ,長らく“undruggable”タンパク質の代表例と考えられてきた.しかし,KRASタンパク質の12番目のアミノ酸であるグリシンのシステインへの変異により生じたKRAS G12Cタンパク質に結合する化合物のスクリーニングを契機として,2013年にswitch Ⅱポケットが同定され,この部位を標的とした創薬が急速に進展した.さらに同時期には,molecular glue(分子糊)とよばれる,薬剤を介してタンパク質間相互作用を制御する新たな概念が発展した.これにより,変異RASと細胞内に存在するシャペロンタンパク質cyclophilin Aとの結合を誘導し,形成された三者複合体によって標的機能を阻害するtri-complex阻害薬や,RASとE3リガーゼを近接させてユビキチン化を介した分解を誘導する薬剤など,新規モダリティを活用した創薬が実現しつつある.このように,RASは現在“druggable”へと変貌しつつあり,RAS変異が高頻度に認められる肺がん・大腸がん・膵がんにおいて臨床応用が進んでいる.一方で,臓器ごとの治療戦略の違いや耐性機序の解明が,しだいに重要な課題となっている.

RAS変異,switchⅡポケット,創薬モダリティ,臓器特異性

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