実験医学 2013年9月号 Vol.31 No.14

Neurovascular Unit 神経-血管-グリアのユニットが脳と体を支配する

  • 荒井 健/企画
  • 2013年08月20日発行
  • B5判
  • 133ページ
  • ISBN 978-4-7581-0099-1
  • 定価:2,200円(本体2,000円+税)
  • 在庫:なし
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《企画者のことば》

われわれの体を構成する細胞は,周囲にある細胞と協力しながら必要とされる役割を果たしている.その機能が特に複雑であると考えられている脳組織でも,異なる細胞同士のクロストークは非常に重要である.脳組織における細胞間の相互作用のメカニズムは,2001年に誕生したNeurovascular Unitという概念により,深く理解されることとなった.Neurovascular Unitは脳卒中の病態を明らかとすることを目的として提唱されたが,現在この概念は脳卒中という枠組みを超えてさまざまな脳疾患領域の研究に応用されている.本概論では,各論に先立ち,ますます重要性を増すNeurovascular Unit研究のキーポイントを紹介する.

神経・血管・グリアはつながっている!異なる細胞間のクロストークをもとに.神経・血管発生から中枢神経疾患の治療まで,脳と体の現象を理解するための米国NIH発の概念を総力特集.

目次

特集

Neurovascular Unit 神経-血管-グリアのユニットが脳と体を支配する
企画/荒井 健
概論-Neurovascular Unit:脳内の細胞間クロストークを理解するための概念的枠組み【荒井 健】
われわれの体を構成する細胞は,周囲にある細胞と協力しながら必要とされる役割を果たしている.その機能が特に複雑であると考えられている脳組織でも,異なる細胞同士のクロストークは非常に重要である.脳組織における細胞間の相互作用のメカニズムは,2001年に誕生したNeurovascular Unitという概念により,深く理解されることとなった.Neurovascular Unitは脳卒中の病態を明らかとすることを目的として提唱されたが,現在この概念は脳卒中という枠組みを超えてさまざまな脳疾患領域の研究に応用されている.本概論では,各論に先立ち,ますます重要性を増すNeurovascular Unit研究のキーポイントを紹介する.
Neurovascular Unitという概念でとらえる脳卒中の病態【寺崎泰和/北川一夫】
脳卒中の病態の1つである脳梗塞の治療では急性期血栓溶解療法が確立されているが,次世代の治療薬,特に神経保護薬はほとんどの臨床試験でその有効性が否定されている.その原因の1つは,ニューロン単独に焦点が当てられてきたことである.それを打破するために考えられた概念が,Neurovascular Unitである.脳虚血の病態において,種々の細胞がどのようにかかわって細胞の生存あるいは障害につながるかを理解することは,将来の治療への道を開くことになる.本稿では,Neurovascular Unitの成り立ちから脳梗塞の病態への概念の応用までを概説する.
血液脳関門および脳循環・代謝調節とアストロサイト【髙橋愼一】
NVU(Neurovascular Unit)とは脳卒中の病態から治療戦略を構築するための概念的枠組み(conceptual framework)である.NVUには微小血管(毛細血管と細動脈)とニューロン,これらを橋渡しするアストロサイトが含まれる.その血管側では内皮細胞,細胞外マトリクス,アストロサイトの足突起が血液脳関門を形成する.脳血流はニューロンの活動によって増減し,代謝基質としてのグルコース,脂肪酸,アミノ酸はアストロサイトで中間代謝を受け効率よくニューロンに運搬される.NVUの生理的メカニズムの研究は,脳卒中のみならず,神経変性疾患,神経免疫疾患など広く中枢神経疾患を理解するツールとなる.
脳白質障害後のオリゴデンドロサイトの再生メカニズム【宮元伸和/卜部貴夫】
Neurovascular Unitは脳卒中の病態をより正確に理解することを目的として提唱された概念である.この概念が誕生してから10年以上が経過し,脳卒中急性期の病態メカニズムが次々と明らかにされてきた.今後もNeurovascular Unitという概念は脳卒中や他の脳疾患の病態を解明するために役立つと思われるが,これまでのところ,この概念は脳白質の病態を理解するためにはあまり応用されてこなかった.そこで本稿では,Neurovascular Unitが重点を置く “異なる細胞同士の相互作用” がどのように脳白質の機能を制御しているかを概説する.
Neurovascular Unitにおけるミクログリアの多様な役割【白川久志/中川貴之/金子周司】
単球・マクロファージ系の細胞であり,脳内の主要な免疫担当細胞であるミクログリアがNeurovascular Unitの構成細胞として認識されるようになったのは比較的最近のことである.その影響は未だ不明な点が多いが,脳構成細胞の生理的機能や細胞間のクロストークに対してミクログリアが重要な役割を果たすことが明らかになりつつある.しかしながらミクログリアの活性化は複雑なメカニズムを介しており,さらに脳内の恒常性に対して善悪二面性を有することからその統一的な理解は非常に難しい.本稿では,ミクログリアの神経機能に与える影響に焦点を当て,その生理学的な重要性や病態時の増悪・修復作用について最新の知見を中心に紹介する.
脳-末梢細胞クロストークを介した神経血管リモデリングの制御【早川和秀/Eng H. Lo】
Neurovascular Unitという概念が提唱され,脳内に存在する細胞同士が脳卒中後どのように相互作用をしているか理解が深められてきた.ダメージを受けた神経細胞は自身の危険を他の細胞に伝える手段をもち,それによって多くの脳細胞が活性化する.しかしその信号は脳内だけにはとどまらず,体中の血液循環を介して末梢の細胞にまで影響を及ぼす.末梢細胞の生理応答は脳卒中を含めた多くの脳・脊髄疾患でみられ,脳-末梢細胞の相互作用は中枢神経疾患を理解するためのヒントとなり得る.本稿では,ダメージを受けた脳が末梢細胞へ及ぼす影響について最近得られた研究結果とともに概説する.
末梢組織における神経-血管クロストーク構築の基本原理【向山洋介】
Neurovascular Unitは,ニューロン,グリア細胞(主にアストロサイト),血管内皮細胞そして血管周皮細胞(ペリサイト)が構造的および機能的に相互作用して,脳微小循環を調節する脳内細胞ユニットである.末梢組織においては,脳内で観察されるような機能的なNeurovascular Unitは未だ報告されていないが,末梢神経束と動脈血管が頻繁に併走することや,末梢交感神経線維が血管平滑筋に覆われた比較的太い動脈血管へ伸長し末梢血管の収縮を支配することが知られている.本稿では,末梢組織におけるNeurovascular Unitを「神経系と血管系の細胞間クロストークによる神経-血管ワイアリング」ととらえ,組織発生とともに神経-血管ワイアリングが構築される基本メカニズムを示す.さらに神経-血管ワイアリングが崩壊した神経変性疾患のダイナミクスをとらえるわれわれの新しい試みについても触れたい.
Neurovascular Unitの概念から導きだされる中枢神経疾患の治療戦略【眞木崇州/猪原匡史】
神経・グリア・血管系と細胞外マトリクスにより構成されるNeurovascular Unitにおいて,細胞-細胞または細胞-細胞外マトリクスの双方向性の多様な相互作用が中枢神経疾患の発症と進行にかかわることが明らかとなってきた.また,ストレス後の傷害性の過程に内因性修復性の過程を伴うこと,同一の細胞・メディエーターが時期や周囲の環境によって相反する作用を示しうることも報告されつつある.傷害性の要素を最小限にし,内因性の再生機構を最大限に促進することが中枢神経疾患の治療アプローチとして望まれるが,そのためには,各疾患における二相性・多相性の過程をNeurovascular Unitという包括的な観点から理解しその制御機序を明らかにしていくことが重要である.

トピックス

カレントトピックス
miRNA ヘアピンループから選択的に生成される機能的小分子RNA【岡村勝友】
組織常在型M2様マクロファージ分化におけるTrib1の重要性【佐藤 荘/審良靜男】
脳弓下器官に存在する体液濃度センサーの感度はエンドセリン-3により増強されている【野田昌晴】
多剤耐性菌感染症の原因となる多剤排出タンパク質の阻害剤結合構造を決定【山口明人/中島良介/櫻井啓介】

連載

【新連載】帰ってきたプロフェッショナル根性論 ―クリエイティブな研究者に訊く
[第1回]異なる価値観の結合で発火する創造性【島岡 要/浦野文彦】
【新連載】教えて! エコ実験 ―工夫&節約のメリハリ研究術
[第1回]エコ実験のすすめ【村田茂穂】
生命に魅せられた研究者たちのマイルストーン
制御性T細胞の研究と免疫疾患【坂口志文】
クローズアップ実験法
Cytoscape による細胞内分子間相互作用ネットワークの解析【斎藤輪太郎/大野圭一朗】
Campus & Conference探訪記
本気で「エピジェネティクス」を語るなら ~第7回日本エピジェネティクス研究会年会【浜崎伸彦】
ラボレポート ―留学編―
日本製の輪ゴムのごとく ―Stowers Institute for Medical Research【菅沼 環】
Opinion ―研究の現場から
若手研究者にとっての研究のアウトソーシング【上窪裕二】

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