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[2017年ノーベル賞解説記事]概日リズムを制御する分子機構の発見

東京大学大学院 医学系研究科 システムズ薬理学教室/理化学研究所 生命システム研究センター 合成生物学研究グループ 大出晃士,上田泰己

2017年のノーベル生理学・医学賞は,米国ブランダイス大学のJeffrey C. HallとMichael Rosbash,そして米国ロックフェラー大学のMichael W. Youngの3氏に贈られた.受賞理由は「概日リズムを制御する分子機構の発見」である.

概日リズムは,地球環境の24時間変動にあわせて,種々の生理活性が周期的に変動する現象である.このリズムが内的な時計機能によって駆動されているとする記述は1729年にまで遡ることができる.Jean-Jacques d’Ortous de Mairanは,暗箱の中でオジギソウの葉の開閉(就眠運動)が24時間周期で生じることから,この日内変動が外環境の変動に従属しているのではなく,生物に内的な機構(概日時計)によって生じていると指摘した.その後,Erwin Bünningは就眠運動の周期の長さが個体によっていくらか異なっており,この違いが遺伝形質として子孫に受け継がれることを1936年に報告した.すなわち,概日時計は遺伝的要因によって構成されている.同時期に概日リズムの示す動的な性質,例えば光などの環境入力に対する応答性がColin Pittendrigh やJürgen Ascoff らによって(ヒトを含む)動物を用いた実験観察を踏まえて,精緻にモデル化,定式化されてきた.1960年にBünning,Pittendrigh,Ascoffらをオーガナイザーとして米国で開催されたシンポジウムCold Spring Harbor Symposium on Biological Clocksは,現在の概日リズム研究の礎を築いたものとして語り継がれている.

それでもなお,概日時計を構成する遺伝子とは何かは長らく明らかでなかった.

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2017年12月号掲載

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